終天に巡り逢うⅣ (ページ28)

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『兄さんはこの世界の主人公で…私はいらない存在だった。私は本当は此処に居ないはずだった。だから、怖かったんだよ。…いつかきっと、私のことなんて要らなくなるって。きっと兄さんは私よりも仲間のことを守ろうとするからって』

「そんなこと…っ！」

『でも選んだでしょ？兄さんの、仲間を』

Aの言葉が俺の胸に突き刺さる。
それは事実だ。俺は、妹を見捨てて仲間を取った。アイツらを喪いたくなくて、俺は禁忌に触れて…世界を崩壊させた。
そうすることで、Aの命が消えることを知っていたのに。俺は、彼女を。

「…俺のことを、恨んでいるか？」

『いや？だって…そうなるって分かってたから。でも、そうだな…うん。たぶん、私は…寂しかったのかもしれない』

と、彼女はほんの少しだけ視線を下げて、顔色を変えた。

『心のどこかで、もしかしたら兄さんが私のことを連れ戻しに来てくれるかもって…言葉をくれるかもってしれないって…少し…ほんの少しだけ、期待してた。でも、そんな夢物語は有り得ないよね。…分かってたけど…やっぱり苦しくて、辛くて…寂しかったんだと思う』

俺は、ずっとAを蔑ろにしていた。アイツは強いから俺なんていなくても大丈夫だと。…あの時、Aはまだたった１４歳の子供だったのに。
俺は心の何処かで自分よりも強くて賢いAを妬んでいた。俺が欲しい強さを持つAのことが羨ましくて…どうして俺にその強さが無いのかと、無意識の内にAから目を逸らしていた。

「俺が…おまえを苦しめたのか」

『…どうかな。別に兄さんだけじゃないよ。最初から、この世界で生きることは…私には苦しかったから』

「…だが、俺はおまえを見捨てた」

それに彼女は微笑む。
寂しそうに、でもどこか諦めたように小さく笑った。

『言ったでしょ？

兄さんはそうするって、分かってたよ』

残酷な、言葉だった。
Aは俺の救いを、最初から諦めていたのだ。

『ロシアに来るだけの時間は無かった。兄さんは裏切り者になって、帝鬼軍から追われてたからね』

「…おまえのところには、追手は来なかったのか？」

『全員殺したよ』

有り得ない。鬼呪装備も持たないAが、たった独りで相手出来る奴らじゃなかったはずだ。
だが、Aの実力なら…出来たのかもしれない。

『ロシアに居たアイツらの信徒達は捨て駒だったからさ。私と同じように鬼呪装備も渡されてなかった。どうでも良かったんじゃないかなぁ』