終天に巡り逢うⅣ (ページ24)

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「ってぇ…」

ー大丈夫？グレン。

褐色肌の吸血鬼に手加減なく頬を殴られ、建物を突き抜けながら吹っ飛ばされた。
尋常じゃない強さだ。アイツは貴族だろう。それも相当高位の。
頭から血が流れている。そこを押さえ付けながら立ち上がると、宙に浮く真昼が俺の顔を覗き込み…そして弾かれたように後ろを見た。

「真昼？」

『…うっは。手加減ナシだなぁ、あの人。これ絶対私情入ってるって。うん、間違いない』

ドクン、と心臓が強く脈打った。
何故なら、その声を俺はよく知ってるから。
あの日、助けられなかった…助けなかった。

傷付けた、俺のたった一人の。

ゆっくりと振り返れば、瓦礫の上に黒いフードを目深に被った一人の小柄な影が腰掛けていた。
深くかぶっているフードのせいで顔は見えない。辛うじて見える口元は、楽しそうに緩やかな弧を描いていた。

『いやぁ、美味しそうな血の匂いだねぇ？』

「…おまえは、なんだ」

『さて。なんだと思う？』

笑う口元から覗く、鋭く尖った牙。彼女も吸血鬼だ。
身軽に瓦礫から飛び降りたソイツは、ゆっくりとフードを下ろす。
ふわりと風に靡く、緩くウェーブがかった毛先が白い黒髪。自分の同じ紫暗の瞳。
その、露わになった顔を見て…俺は思わず顔を歪めた。

「…A」

『…久しぶり、兄さん』

誰もが認めるであろうほど美しい大人になったAが…たった一人の妹がそこには居た。

「なんで、」

『なにが？』

「なんでおまえがここに…っ生きて…！！」

俺の言葉にAはおかしそうに嗤う。

『はは。酷いなぁ、兄さん。私に会いたくなかったの？』

「っそういう意味じゃねぇ！！」

『じゃあどういう意味？…ああ、そっかぁ。私はあの時もう１４歳だったもんね。生きてるわけないってこと？…それとも、

______死んでいて欲しかったのかな？』

と、彼女は残酷に笑った。

「そういう意味じゃねぇっつってんだろ！」

『じゃあ教えてよ。どういう意味なの？』

「おまえはあの時１４歳だったが鬼呪装備を渡されなかった！ウイルスは１３歳以上の人間を殺すものだったんだぞ！？だから、」

『兄さんは、私を見殺しにした？』

淡々と紡がれた言葉に口を噤んだ。

『そうだよね？…兄さんは血の繋がりのある家族の私のことは見殺しにして、血の繋がりのない家族を助けた』

「、は」

何故。何故それを、Aが知っている？
混乱する俺を嘲笑うかのような笑みを浮かべて、彼女は言葉を続ける。