終天に巡り逢うⅣ (ページ21)

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溜め息を吐くと消音呪術を展開する。フェリドに聞かれたくないから。

『…私は、あの人を愛してるし信じてる。そういう感情をくれたのは彼だけだった』

「…」

『別に騙されていてもいい。一過性のものでもいい。それでも私にとって、彼の言葉は本物だから』

「…」

『…私は彼のそばにいたいんだ。私を欲してくれた、愛をくれた…愛を教えてくれた…あの人の』

「…そうなんだ」

ミカエラはそう呟き、口を閉ざす。

『…君は、何故吸血鬼になった？』

知っているが、問うてみる。
ミカエラは拳を握り締め、少し間を置いてからゆっくりと震える唇を動かす。

「家族を、守りたいんだ」

『…』

「僕の、たった一人の家族を」

『…そう』

百夜優一郎。
この物語のもう一人の主人公。彼は今、兄さんの元に居るのだろう。優一郎は、この世界でなくてはならないものだから。

「醜い人間どもから、優ちゃんを助け出すんだ」

強く、彼は言う。

『そう。まぁ頑張れば？君の言う、醜い人間どもから家族を守るために』

そう言って立ち上がる私をミカエラは見上げてくる。

『君はいつか、きっと自分を殺すね』

「、え？」

『いや違うな。君はもう、自分のために生きてないよね。家族のために生きてる。それが君の生きる理由か』

「…ああ。そうだ」

『近いうちに君も、君の家族もきっと重大な決断を迫られるよ』

「！どういう」

ーA。

ミカエラが私に問おうとして、その時、声が聞こえた。
愛しいあの人の、私の名前を呼ぶ声が。

『呼ばれてる。行かなきゃ』

「ちょっと待って！」

『じゃあね』

引き止めようとするミカエラを無視して窓から身を投げ出す。
真っ直ぐに、クルルの屋敷を目指す。迅る気持ちを抑えつけて、ウルド様の元へ向かう。

「A」

目の前に彼が降り立つと同時に抱き締められる。
ほろ苦い香りが私を包み込むと、安心させられた。ぎゅう、と縋るように抱き着く。

「どうした」

『会いたかったので』

その言葉に彼は私の旋毛にキスを落とす。

「今から向かうぞ」

『…はい』

ついに。
ついに兄さんに会う。
その時私はどう思うのだろうか。何を思うのだろうか。
まぁでも、何を思ったって私はウルド様のそばに帰ってくるのだけれど。

「A」

私の名を呼ぶアカい瞳に宿る温もりが、執着が、色が、私を絡め取る。

『行きましょうウルド様。…全てを、断ち切るために』

「ああ」

貴方に会いに行くよ。

…兄さん。