終天に巡り逢うⅣ (ページ1)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:35,076 hit

１５０ページ1

「おー？やぁーっと帰ってきたのか」

あの後、ウルド様に手を引かれて鳥居をくぐると、そこには瑚月とルクさんがいた。
瑚月は何を考えているのか分からない微笑みを浮かべており、ルクさんも私を見ていつものように笑って近寄ってくる。

『ルクさん』

「ったく。心配かけんじゃねーよじゃじゃ馬娘め」

『しんぱい、』

むず…と胸の奥がむず痒くて、そこを鷲掴んで少し俯く。
そんな私を見て微かに笑ったような気配と共に、頭の上が重くなる。
ぐしゃぐしゃと掻き回す、ウルド様とはまた違う、大きな掌。

「選んだんだな」

『…うん、』

「そっか」

『…ルクさん、』

「んー？」

顔を上げる。

『…ありがとう』

彼は虚を突かれたような顔を一瞬して、そして笑う。

「まぁ、お礼は追々だな」

『うぇ』

「なんだ？言葉だけじゃ足りないぞー？」

『うぇー』

「行動で示さないとな」

『うぇぇー』

「うるせーよ」

小突くルクさんがウルド様を見て、げ…と声を漏らしてそそくさと手を下げる。それに首を傾げてウルド様を見上げるも、何も分からない。

『ウルド様？』

「なんだ」

なんだか、その表情は。

『…。なんか、機嫌が悪いですか？』

「そう見えるならそうなんじゃないか？」

『えぇ…なんでぇ…』

「あーあ。これだから恋愛経験値ゼロ娘は」

『はぁ？喧嘩売ってるんですか？』

「でも事実だろ？ゼロ娘」

『なんですか、それ。アホっぽいからやめてください』

「アホじゃん。恋愛に関して」

『はぁ？殴っていいですか？』

「やだね」

なんかムカつくんですけど。
じと、と半目で睨め付けるもルクさんはどこ吹く風だ。

「A」

『なん、』

目の前にウルド様の顔が広がる。
唇に触れた感触がして、離れて。
一つ間をおいて、小さな悲鳴を上げた。

「何故ルクばかり構う」

『かま…ルクさんがウザ絡みしてくるんですよ』

「俺かよ」

『アンタだよ』

「生意気娘復活ってか？…ウルド様ぁ。Aにオシオキした方がいいんじゃないですかぁ？」

『！？』

ギョッとしてウルド様を見上げると、真っ赤な瞳が細められた。

あれれー。

『なんで私が？絡んできたのルクさんなんですから、ルクさんにオシオキすべきでは？』

「嫌だね」

『私だって嫌ですよ』

「大丈夫大丈夫」

『適当過ぎませんか』

「…A、」

不機嫌そうな声が私の名前を呼ぶと、腰に腕を回して引き寄せられる。

「ふふ、」

ふいに楽しげな笑い声が響く。