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ぼう、と空を見上げる。
ウルド様の衝撃発言をスルーして早数日。特に何かが変わったわけではない。
いつも通り仕事をこなし、終われば自由時間になる。
『…』
ーおまえを特別扱いすることにした。
そう、真っ直ぐな眼差しで彼は言った。
何故急にそんなことになったのか。私の何が彼の琴線に触れたのだろうか。
思い返しても全く分からない。
というかむしろ無いと思うだけれども。
『わっからーん』
ぐてん、とベンチの背凭れにだらしなく凭れてぼんやりと遠くを見つめていれば、突き刺さる悪意と共に影が差した。
気怠げに起き上がり、それを見据える。
『なに？』
「おまえには、人間としての誇りがないのか」
はーん？こいつら、私がウルド様の側にいることが気に食わないんだな。
目の前に五人の人間が私を蔑むような視線で見下ろしながら立っている。
『あー。そうなんですよねー』
「ふん。所詮は下賤な一瀬の者ね」
ぴくり、とそれに反応する。
なるほど。こいつら。
『おまえら、呪術組織の人間か』
「俺たちは柊家に忠誠を誓う組織の人間だ」
『へー、そう』
柊。
久しぶりに聞いた、忌々しい名だ。
『で？その忠誠を誓うあんたらが私に何の用？』
「人間のくせに、吸血鬼に尻尾を振る愚か者に制裁を。…ああ、ごめんなさい？貴女、ネズミだったわね」
ネズミ、というのも久しぶりに聞いた。一瀬家は五百年前からそういう扱いだ。
見下すような笑みを浮かべる彼等を冷めた眼差しで見つめる。
『あはは。いやぁ、吸血鬼の家畜様には敵いませんよ〜。ご苦労様ですぅ。毎日血を捧げてて〜』
すると、彼等はカッと顔を赤くする。
「ふんっ！どうせおまえ、吸血鬼に取り合ってるんだろ！見た目はまぁまぁいいからな！この売女め！」
『別に取り合ってないけど』
「具合はどうだ？さぞいい思いをしているんだろ？」
思わず眉根を寄せる。それを見た彼等が調子に乗る。
「身体を売って、贅沢をするとはな！流石は一瀬のネズミ。やることが我々人間とは違う」
『うわぁ。すごい妄想。知ってる？そういう妄想をする奴の方が、そういう欲望があるんだ』
「ふんっ！吸血鬼などに屈する我らではない」
その言葉におかしそうに嘲笑を浮かべた。
『あはは。なに言ってんの？屈してないなら何故その服を着てるわけ？ああ、コスプレか何か？わさわざ家畜用の服を着てるなんて…さっすがぁ〜』
「っ」
家畜用の服を指差して言えば、屈辱に顔を歪める。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
