終天に巡り逢う (ページ30)

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刀身が透明な剣だった。見たことのない素材。物珍しげに翳し見る。

『ガラスっぽいけど、きっとガラスじゃないんですよね？』

「ああ。特殊な素材で作られている」

『ほう。面白いなぁ。ルク様も同じ武器ですか？』

「あいつのは型が違う。両手に指輪をしているだろう。あれに血を吸わせて剣を顕現させる」

『…ファンタジーですね』

血を吸わせて剣を顕現させるとか。どういう原理なんだろうか。分からないな。
ありがとうございました、と言って剣を返す。

「A」

『はい？』

再びソファーに座ったウルド様にちょいちょいと呼び付けられるので、素直に近付く。

『うわっ！？』

すると腕を引かれ、ウルド様の方に身体が傾いた。

『、な…なんですか？』

私の腰に腕を回し、密着させるウルド様の顔が間近にある。流石にこれには顔を赤らめる他ないだろう。
というかいったい何だ！？

『あの、ウルド様？』

じ、と私を見下ろすウルド様の透き通った美しい真紅の瞳に思わず魅入る。
感情のない、虚無すら感じる瞳。不純物がないからだろうか、余計に美しいと思った。
ウルド様は無言で私の頬に手を添えて、指で撫でる。くすぐったくて身をよじろうとすれば、腰に回された腕がそれを許さなかった。

『ウルド様、くすぐったいです』

「そうか」

『あと、ちょっと距離が近過ぎて正直ドキドキするので離れたいです』

「A」

『はい？…っ、』

ウルド様が私の首筋に顔を寄せた。吐息が肌にかかり、ぴくりと身体を揺らして逃れようとすれば彼の腕が許さない。
そして、ぶつり、とウルド様の牙が私の肌に突き刺さる。
そこから血を吸われる音と、甘い快楽が生じる未知の感覚に、思わずウルド様の服をギュッと握り締める。

『っ…ウルド、さま…！』

名前を呼べば、彼は顔を上げた。その唇には私の血が着いていて、扇情的で。

『…都市での、直接的な吸血はダメなんじゃないんですか？』

「罰だ」

しれっとした顔でそう言ったウルド様から退こうと身体を起こそうとした。

『…あれ、』

が、力が入らず逆に彼の胸の中に身体が傾く。

「血を吸い過ぎたな」

そんな私の身体を持ち上げるとスタスタと続きの部屋に行き、そこにあるベッドへ私を下ろす。

『あの、』

「休んでいろ」

『えっ。いや、だってここウルド様の…』

「別に使ってない」

寝ろ。
と私の視界を掌で覆う。
すると何故だろう。眠気が急激に襲ってきて、すぐに私の意識は途切れた。