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「ルク、A。これはなんだ」
「あ」
『あ』
やべー。
と顔を見合わせる私達を見事な無表情で見据えるウルド様。
いち早く私は口を開いた。
『ルクさんが手合わせしろって』
「あ。おい」
「…ルク」
私の言葉にルクさんが肘でつついてくるが無視する。
ウルド様は瞳を窄めて、責めるように彼を軽く睨み付けた。
流石のルクさんもマズいと思ったのだろうか。言葉を続ける。
「あー。えーと。すみません。後で部下に綺麗にさせますんで」
ざまぁみろ。ていうか自分でやれよー。自分でやるから意味があるのに。
と内心思っていると、ルクが振り返ってくるので瞬時に無表情を作る。
ふぅ。危ねぇ。
「A」
『はい』
なんて思っているとウルド様は私に声をかけてきたので、思わず背筋をピシッと伸ばしてすぐさま返事をする。
「上位始祖であるルク相手に勝てると思ったのか」
『そりぁまぁ…勝てるとは思わなかったですが…一泡吹かせたいとは思いました。普段揶揄われているので、その仕返…お返しに是非とも驚かせて差し上げたかったです』
「いま仕返しって言おうとしたろ」
と不貞腐れながら言う私にウルド様は、はぁ…と溜め息を溢した。ルクさんは無視だ。
「怪我をしたらどうする」
『自分で治療出来ます』
「…重傷を負えば？」
『最悪死ぬだけじゃないですかねぇ』
事もなさげに淡々と言うと、ウルド様の纏う雰囲気がガラリと変わった。
思わずびくり、と肩を揺らし身を硬くする。
「A」
『は、はい』
唸るような低い声。
「おまえは私の所有物だ。勝手に傷を作ることも、ましてや死ぬことなど許さない」
『は？…え？…あ、はい』
「よく覚えておけ」
『…はい。分かりました』
こえー。なんか知らないけど、執着されてない？自分の所有物は大事にする派なの？それは大丈夫なやつなのかな？アカンやつはダメだからね？断固拒否。
と内心怯える私について来い、と声をかけて、来た道を戻るウルド様に慌ててついて行く。
ちらりとルクさんを振り返れば彼は楽しそうな表情を浮かべて、頑張れよと口パクで言いながら手を振っていた。
『…』
おまえマジで覚えとけよ。こうなった根本的な原因を作ったのおまえだからな！！
べー、と舌を出して悪態を吐くも彼は変わらず楽しそうな笑みを浮かべたまま人差し指と中指をクロスさせて幸運を祈るジェスチャーをしてきて、またそれがムカつくったら。
何が幸運を祈るだよ。今度絶対殴る。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
