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「ん?」
と、私の顔を覗き込むルクさんに何か言おうと思ったが結局何も言わずに口を噤む。
「どうした?」
『いえ別に…』
「ふぅん?」
ぐりぐりと相変わらず撫でくりまわしてくる。なんなの?ブームなの?
『…ちょっと、』
挙句、喉元を撫でてきた。完全に猫を相手にしているそれだろう。
「にゃーって言ってみ?」
『言わねーよ。殴るぞ』
「ははは」
イラっとした荒い言葉遣いに笑うルクさんを睥睨してから席を立って歩き出すと、横について来られた。
『なんですか?』
「暇だし」
『じゃあ本でも読めばいいんじゃないですかねぇ』
「興味ねーし」
『じゃあ走って来たらいいんじゃないですか?』
「なんでだよ。面倒臭い」
『ルクさんもうお爺ちゃんなんだから。足腰弱るでしょ?』
「はぁ?弱らねーよ。頭砕くぞ」
『うわー。暴力はんたーい』
「おまえが言うなっての」
なんてくだらない話をしながら歩く。
今日の天気は晴れだ。子供たちが楽しそうに遊んでいる。彼らは飼われてはいるが、そこまで窮屈な思いをしているわけではないらしい。ウルド様の政策だろうか。
「待ってよお兄ちゃん!」
「早くしろよー!」
目の前を兄妹が走り回る。無邪気なものだ。私が何も知らない無知な子供だったのなら、あんな風に兄さんの後ろを追いかけていたのだろうか。…アホくさ。
私の視線の先を追ったルクさんが口を開く。
「…なんだ?あれが羨ましいのか?」
『まさか』
「じゃあ俺のことをお兄ちゃんって呼ぶか?」
『、じゃあの使い方よ。私の返事聞いてました?』
「いいよ。俺のことお兄ちゃんって呼んでみ?」
『呼ばな…』
「お兄ちゃん、兄さん、ルクお兄ちゃん、ルク兄さん、ルク兄…どれでもいいぞ」
『聞けって』
楽しそうに列挙していくルクさんに溜め息を一つ吐いた。
何が良いんだコイツ。面白がってるだけか。
「んー。ルク兄にするか?」
『しねーよ。聞けって言ってんでしょ』
「ほら」
『…』
コイツも他人の話聞かねーな。なんなの。吸血鬼って他人の話聞かない奴ばっかりなの?そうなっちゃうのかな?
気持ち目を輝かせながら私を見下ろすルクさんに大きな溜め息を吐くと口を開く。
『……、ルク兄…』
「うん…うん、いいな。よし。これからそう呼べよ」
満足げな顔で頷かれ、私には疑問しか残らない。
『わーい。お兄ちゃんゲットだぜ〜』
「棒読み過ぎだろ」
ほんと生意気だなー。
とやはりルクさんは笑った。
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作者名:レイ | 作成日時:2021年5月2日 22時