終天に巡り逢う (ページ13)

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なんて曖昧で虚ろな存在なのか。ここに存在する意味なんて、私にあるのか。無いのなら、何故私はこんな檻の中に放り込まれたのだろうか。神の悪戯か？戯れか？なら、なんてはた迷惑な遊びだろう。
と、嗤う。

「A」

不意にウルド様が私の名前を呼んだ。全ての感情を仕舞い込み、彼を見上げる。

「私は今から会議がある。あとは好きにしていろ」

『分かりました』

コートを翻し、颯爽と歩いていく後ろ姿は堂々としている。
彼はここロシアの統治だけではなく世界中の吸血鬼を纏めている、いわば長だ。基本的に互いの仲が悪いと聞く吸血鬼を纏め上げるのは大変だろう。よく放り出さないなと正直感心する。まぁ、本人が生真面目らしいので途中で投げ出すのは性に合わないだけなのかもしれないが。
そんな彼が私を手元に置く理由とは何か。一、面白そう。二、怪しい。三、単純に血が美味そう。
二、かな。彼は鼻が利くらしいし…あのフェリド・バードリーですら兄さんから漂うリーグ・スタフォードの匂いに気付いたくらいだ。最上位のウルド様が気付かないわけがない。
ルクさんからも何か話を聞いているのかもしれない。彼の前で、恒例行事のフルボッコ祭り中に少しだけ血を流したことがあるし。
いやぁ、怖いなぁ。私どうなっちゃうんだろー。

『…はぁ』

近くのベンチに腰掛けてぼんやりと空を見上げる。
この空を兄さんも見ているのだろうか。
なんて、酷くくだらないことを考えて、そして自嘲の笑みを浮かべる。
馬鹿げてる。兄さんは私のことは死んだと思っているだろう。当然だ。世界崩壊前、私は鬼呪装備を貰えなかった。その時私は既に１３歳以上だったのに、柊は私には不要だと許可しなかった。クソである。
とは言え、私は死ななかったのだが。それは幸運と言うべきか否か…まぁこの状況下では幸運なのかは分からないけれど。生きてるだけ儲けものなのだろうか。この生に意味が無いのならそうは思わないけれど。

『…ああ、雨か…』

どんよりとした空から、ぽつりぽつりと雨粒が降り出した。ぼう…と空を見上げながら、身体を打ち付ける雨を享受する。

雨は好きだ。全ての音を掻き消してくれる。薄汚れたこの手に付いた血を洗い流してくれる。嗅ぎたくない匂いを隠してくれる。だから好きだ。

「雨だ！」

「濡れちゃうよ！早く中に入ろう！」

周りに居た子供たちは慌てた様子で屋内へと戻っていく。
でも私はそこから動かずにただ虚空を仰いで、雨に打たれ続けた。