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「信治郎さまから、お話は伺いました」
Aの指先がきゅっと縮こまる。
「……はい」
「Aさんが、一度はお断りしようとされたことも」
そのひと言で、胸の奥がずきりと痛む。
やはり伝わっている。
当然だ。
信治郎が呼んだのだから、何も知らないまま来るはずがない。
「申し訳ありません」
気づけばそう口にしていた。
北斗の眉が、ほんの少しだけ寄る。
「どうして謝るんですか」
「だって、私は……」
言葉が続かない。
断るつもりだった。
でも本心はそう単純ではない。
その曖昧さも弱さも、全部見透かされてしまいそうで苦しい。
北斗は少しだけ息をついて、穏やかに言った。
「今日は、謝っていただきたくて来たのではありません」
Aは顔を上げる。
北斗の目はまっすぐだった。
やさしいのに、逃がさない目だった。
「Aさんが何を不安に思って、何を理由に断ろうとしたのかも、だいたい想像はつきます」
「……」
「身分のこと。南雲家のこと。私に迷惑をかけるかもしれないこと」
北斗の声は静かだ。
「全部、わかります」
その“わかります”が、思った以上に苦しかった。
軽く「そんなこと気にしなくていい」と言われるより、ずっと。
この人は本当に、こちらが苦しんでいる場所をわかって言っているのだ。
「ですが」
北斗は言葉を継ぐ。
「それでも私は、Aさんに直接お話ししたかった」
Aは膝の上の手を見つめる。
もう、逃げ道は少しずつ塞がれていく。
「私は、あの日祭りの町で簪をお渡ししたときから、いえ、その前からずっと、Aさんのことを気にかけていました」
北斗の声は、どこか自分自身へ言い聞かせるようでもあった。
「京本屋で初めてお会いして、町でまた会って、南雲家でAさんの立場を知って」
そこで一度だけ言葉を切る。
「見過ごせなくなったんです」
Aの睫毛が震える。
見過ごせない。
その言葉は、前にも聞いた気がした。
でも今こうして直接向けられると、まるで違う意味を持つ。
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mauri(プロフ) - (^-^)さん» コメントすごく嬉しいです、!こちらこそお付き合い頂けて本当に有り難いです、!後日譚でもキュンキュン用意してますので、是非よろしくお願いいたします! (3月22日 1時) (
レス) id: 29c379210f (このIDを非表示/違反報告)
(^-^) - とても楽しく読まさせて頂きました。心温まるストーリーとお言葉に、キュンキュンさせられました。続篇とても嬉しいです。これからも楽しみにお待ちしております。 (3月22日 1時) (
レス) @page50 id: 0f3b89c895 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mauri | 作成日時:2026年3月14日 23時


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