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屋敷のどこかで戸の開く音がして、誰かの足音が遠くに響く。


新しい一日が始まろうとしている。


昨日までとは違う朝。


でも、怖いばかりではない朝。


北斗がふと、やわらかく言った。


「A」


「はい」


「もう一度、呼んでいただいてもよろしいでしょうか」


その意味はすぐにわかった。


昨日、ようやく“北斗さん”と呼べた。


それが北斗にとってどれだけ嬉しかったか、もう十分すぎるほど伝わっている。


Aは少しだけ照れて、それでも昨日よりは自然に口を開いた。


「……北斗さん」


朝の光の中でそう呼ぶと、北斗の目元がやわらかくほどける。


「はい」


たったそれだけの返事なのに、胸の奥がまたくすぐったくなる。


北斗は少しだけ身を寄せて、Aの額へそっと口づけた。


昨夜よりも軽く、まるで“おはよう”の代わりのようなやさしい口づけだった。


「今日から、よろしくお願いいたします」


その言葉に、Aは目を瞬く。


“今日から”


それはつまり、昨日までの特別な一日ではなく、これから続いていく日々の始まりなのだということだった。


Aは胸の奥でその言葉を受け止めてから、小さく笑った。


「……はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」


北斗は満足したように目を細める。


外では朝の光が少しずつ明るくなっていく。


新しい家、新しい呼び名、新しい日々。


まだ知らないことも、不安なことも、きっとこれからたくさんある。


それでも今、Aは思う。


この人となら、一つずつ知っていけるかもしれない。


怖さも、戸惑いも、全部抱えたままでも、一緒に歩いていけるかもしれない。


婚礼の翌朝。


それは、ひとつの物語の終わりであり、もうひとつの始まりでもあった。


窓の外では、秋の空が高く澄んでいる。


その下で、Aは初めて、自分で選んだ幸せの中にいた。


END

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mauri(プロフ) - (^-^)さん» コメントすごく嬉しいです、!こちらこそお付き合い頂けて本当に有り難いです、!後日譚でもキュンキュン用意してますので、是非よろしくお願いいたします! (3月22日 1時) (レス) id: 29c379210f (このIDを非表示/違反報告)
(^-^) - とても楽しく読まさせて頂きました。心温まるストーリーとお言葉に、キュンキュンさせられました。続篇とても嬉しいです。これからも楽しみにお待ちしております。 (3月22日 1時) (レス) @page50 id: 0f3b89c895 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mauri | 作成日時:2026年3月14日 23時

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