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北斗はまっすぐにこちらを見ていた。
急かさず、でも待っている目だった。
「……北斗、さん」
声にした瞬間、世界が少しだけ変わった気がした。
たったそれだけの呼び名なのに、胸の奥がきゅうっと締めつけられる。
恥ずかしくて、そのままもう一度俯いてしまう。
しばらく返事がなくて、Aは思わず不安になる。
変だっただろうか。
小さすぎて聞こえなかっただろうか。
けれど次の瞬間、すぐ近くで息をつく気配がした。
「……駄目です」
Aははっとして顔を上げる。
北斗は少し困ったように、でもひどく嬉しそうな顔をしていた。
「そんなふうに呼ばれたら、思っていたよりずっと困ります」
「え……」
「嬉しすぎて」
その言葉に、Aの頬がまた熱くなる。
北斗は少しだけ目を伏せ、それからやわらかく笑った。
「でも、ようやく聞けました」
その笑みは、今日見たどの表情よりもやわらかかった。
婚礼の場での落ち着いた顔とも、人前での整った微笑みとも違う。
本当に嬉しいときの顔なのだとわかる。
「……そんなに、ですか」
Aが小さく訊くと、北斗は迷わず頷いた。
「そんなに、です」
はっきり言われてしまうと、もう何も返せなくなる。
けれど胸の中は、恥ずかしさと同じくらいあたたかかった。
北斗は静かに言った。
「今日、たくさんのことがありましたけれど」
「はい」
「いちばん嬉しかったのは、今かもしれません」
その言葉に、Aは思わず笑ってしまった。
「婚礼の日なのに、ですか」
「はい」
北斗はあっさり頷く。
「ずっと聞きたかったので」
その真面目さが可笑しくて、でも愛しくて、Aはもう何も言えなくなる。
やわらかな夜の気配の中で、二人は並んで庭を見つめた。
もう、ただの“松村さん”ではない。
ちゃんと、自分の口で呼んだ。
それだけで、夫婦になるということが少しだけ現実味を持った気がした。
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mauri(プロフ) - (^-^)さん» コメントすごく嬉しいです、!こちらこそお付き合い頂けて本当に有り難いです、!後日譚でもキュンキュン用意してますので、是非よろしくお願いいたします! (3月22日 1時) (
レス) id: 29c379210f (このIDを非表示/違反報告)
(^-^) - とても楽しく読まさせて頂きました。心温まるストーリーとお言葉に、キュンキュンさせられました。続篇とても嬉しいです。これからも楽しみにお待ちしております。 (3月22日 1時) (
レス) @page50 id: 0f3b89c895 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mauri | 作成日時:2026年3月14日 23時


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