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信治郎は低く続けた。


「松村くんに迷惑をかけたくない。身分が違いすぎる。南雲家の中でも波風が立つ。……そういうことばかりを並べていた」


それは北斗にも想像できる答えだった。


Aならそう言うだろう。


自分の気持ちより先に、相手や周囲のことを考える。


そしてその考え方が、長いあいだこの家で生きるための癖になってしまっている。


「ですが」


北斗は静かに問う。


「ご本人のお気持ちは」


信治郎は少しだけ目を細めた。


その問いが来るのを待っていたようでもあった。


「私も、そこを聞いた」


応接間にはそれきり一瞬、沈黙が落ちる。


「嫌なのか、と」


北斗の胸が小さく鳴る。


「そうしたら、答えられなかった」


その返事だけで、北斗には十分だった。


嫌ではない。


けれど、好きだとも行きたいとも、自分からは言えない。


そういう場所にAは立っているのだろう。


信治郎は小さく息をついた。


「あの子はずっと、自分の望みを後回しにして生きてきた」


その声音には、父親としての悔いが滲んでいた。


「だから今さら“お前はどうしたい”と聞いても、うまく答えられんのだろう」


北斗は何も言わず、ただ真っ直ぐに信治郎を見る。


信治郎はそこで、少しだけ表情をやわらげた。


「松村くん」


「はい」


「私は君を信じる」


その言葉は、北斗の胸へまっすぐ落ちた。


簡単に口にできる類いの言葉ではない。


とくにこの人にとっては、なおさらだろう。


「こんな父親でも」


信治郎は視線を少しだけ伏せる。


「あの子には、幸せになってもらいたいと心から思っている」


北斗は思わず息をつめた。


信治郎がここまで口にするとは思っていなかった。


南雲家の当主としてではなく、父として話している。


そのことがはっきりわかった。

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mauri(プロフ) - (^-^)さん» コメントすごく嬉しいです、!こちらこそお付き合い頂けて本当に有り難いです、!後日譚でもキュンキュン用意してますので、是非よろしくお願いいたします! (3月22日 1時) (レス) id: 29c379210f (このIDを非表示/違反報告)
(^-^) - とても楽しく読まさせて頂きました。心温まるストーリーとお言葉に、キュンキュンさせられました。続篇とても嬉しいです。これからも楽しみにお待ちしております。 (3月22日 1時) (レス) @page50 id: 0f3b89c895 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mauri | 作成日時:2026年3月14日 23時

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