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少し歩いた先で、庭園の中ほどにある東屋へ入る。


腰かけて一息つくと、最初の緊張も少しずつほどけていった。


そこで初めて、二人は店でも屋敷でもない話をした。


北斗が子どものころ、母に連れられて季節の花を見に行くのがわりと好きだったこと。


本は読むが、意外と人に勧めるのは得意ではないこと。


甘いもの好きの母に付き合っているうちに、自分も少しずつ好みがわかるようになったこと。


Aもまた、子どものころに本の挿絵を見るのが好きだったことや、南雲家へ来る前は秋祭りのにぎやかな音を遠くから聞くのが楽しみだったことを、ぽつりぽつりと話した。


それはどれも、これまで誰にもわざわざ話すことのなかったような些細なことばかりだった。


けれど北斗は、どの話もきちんと聞いてくれた。


途中で流したり、軽く受けたりせず、ちゃんと受け止めてくれる。


「Aさんは」


北斗がふと穏やかに言う。


「思っていたより、好きなものをたくさん持っていらっしゃるんですね」


Aは少しだけ目を見開いた。


「そうでしょうか」


「はい」


北斗は頷く。


「ご自分ではあまりお話しにならないだけで」


その言い方が妙に的確で、Aは苦笑するしかなかった。


「……あまり、そういうことを言う機会がなかったのかもしれません」


「今はあります」


北斗は静かに言った。


「ですから、これからは聞かせてください」


その言葉に、Aはまた胸の奥があたたかくなる。


“これからは”


そういう未来を、北斗はあまりにも自然に口にする。


東屋を出たあとも、二人はゆっくり庭園を歩いた。


話すたび、少しずつ知らなかった部分が見えてくる。


北斗は思っていたよりも冗談を言う人だった。
ほんの少しだけ、意地悪な言い方をすることもある。


Aが真面目に返すと、面白そうに目を細めることもある。


一方でAも、自分が思っていたより素直に笑っていることに途中で気づいた。


こんなふうに何でもない話で笑うのは久しぶりだった。


帰り道は行きよりずっと自然だった。


並んで歩く距離にも、少し慣れてきている。


庭園の出口が近づいたころ、不意に北斗が足をゆるめた。

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mauri(プロフ) - (^-^)さん» コメントすごく嬉しいです、!こちらこそお付き合い頂けて本当に有り難いです、!後日譚でもキュンキュン用意してますので、是非よろしくお願いいたします! (3月22日 1時) (レス) id: 29c379210f (このIDを非表示/違反報告)
(^-^) - とても楽しく読まさせて頂きました。心温まるストーリーとお言葉に、キュンキュンさせられました。続篇とても嬉しいです。これからも楽しみにお待ちしております。 (3月22日 1時) (レス) @page50 id: 0f3b89c895 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mauri | 作成日時:2026年3月14日 23時

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