つめたいフリの裏側は [赤]

- special story - chocolate 1 - ページ49

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女の子たちに囲まれている彼を見つめてため息をつく。







「はぁ...」


「何やってんの早く行きなよ、まだ渡してないんでしょ」


「未沙は！あんたは図太いから！」








くわっ、と目を剥く。



未沙はもう小瀧に渡したらしい。お熱いことで。









わたしのため息の理由は、



付き合い始めてから初めてのバレンタインだというのに、



彼氏が女の子に囲まれてチョコ差し出されてニヤニヤしてること。








...いや、あれはニヤニヤしてるというか、



そわそわしてるというか。








どんだけ差し出されてんのよチョコ。



私から！大本命のわたしからまだもらってないでしょうが！



わたし、大本命のままでいられるかしら。










大学に入ってからというものしげおかはモテ通しで、



告白されることなんてザラ。



不安にならざるを得ない。









慣れないお菓子作りに悪戦苦闘しながら準備したトリュフチョコも、



渡せずに終わってしまいそうなのだ。









中庭で取り囲まれてハーレム状態のしげおかを、



カフェテリアから見つめる。



...なんでさ、私のとこ来てくれないの。







少しは疑問に思ってよ、彼女から貰ってないんだよ？









こうやってしげおかがつめたい態度というか、



相手にしてくれないとやっぱり不安になるもので。








楽しそうなしげおかに少しイラついたから、



チョコは明日渡そう。










下がりかけた感情を振り切って、



「未沙、いこ」



カフェテリアのテーブルから立ち上がりかけた、そのとき。










「Aー！！待っててやー！！！」











ああくそ、ずるい。



こんなタイミングで、



わたしの不安になったタイミングで、



見透かしたように呼び止めるなんて。








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