乾かそう、お姫サマ。 ページ5
今、Aはお風呂に入っている。
今日はAが初めて俺の家に泊まる。
若干緊張しつついつも通り過ごしているつもりだ。
ーどうなるか分からないけど。
「…まあでもここまで襲ってない。」
なんて情けないこと言いながら、Aがあがってくるのを待っていると、ドアがガチャ、とあいて、出てきたAはにぱっと笑って、お先に、と言った。
髪はしっとりと濡れて艶やかに揺れていて、滑らかなほっぺも桃色に染まって、芯まで温まって来たことがよく分かる。
俺はそんないつもと違うAに動揺を隠せず、生返事をして、視線をそらす。
ーやべーなんかいつも以上に可愛いすぎて色々やべー。
頭の悪いことを考えつつ、チャンネルを意味もなく変えた。
するとあろうことか、Aがすとん、と俺の隣のソファーに座った。
お気に入りの番組らしく鑑賞を始める。
ーAのことだし、この状況に何も思ってないんだろうけど…やばいだろ…服もパジャマで薄着だし…。
しかし変に離れても怪しいので、俺はそのまま一緒にみた。
テレビを鑑賞中も、Aから香るシャンプーの香りやらで、反応してしまう。
だいぶ時間がたって、そろそろ俺も風呂に入ろうと、立ち上がった。
ーくしゅん
結局Aの可愛いくしゃみによって逆戻りしたけれど。
「A、髪乾かせよ!」
俺がつっこむとAはめんどくさいからと指で髪をいじりだす。
まったく動こうとしないAに、風邪をひかれては困る。
俺がAの髪をすくって「傷んじゃうぞー」なんて髪の代弁をすると、Aが名案を思いついた、とでも言うように突然振り返って俺をみた。
数分後、なぜかAの髪を丁寧に乾かしている俺。
こてんと首を曲げて、俺に髪を乾かすように言ってきたAは、されるがままになっている。
Aは気持ちよさそうに鏡台に付属している椅子に座って、足を嬉しそうにぱたぱたさせている。
普段は見えないうなじや、つむじを愛おしく感じながら、ふと顔をあげると、鏡越しに目が合う。
Aは、きらりと潤う目で俺をみると、ふざけてウインクをした。
ーこいつ…。
一手上にAがいるのが気に食わなくて、ドライヤーを止めた。
そしてサラサラなAの髪をすくってみえたうなじにキスをすると、Aは驚いて体を縮こませた。
「…誘ってんの?」
みるみるうちに真っ赤になるAに勝った気分になる。
「…あんま男、なめんなよ。」
今日のおはようは?
「…おはよ、お前、猫みたいに寝るんだな」
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作者名:沢井 | 作成日時:2018年1月2日 15時