ホラーだ、お姫サマ。 ページ3
がっしゃん！
きゃあああ！
物が破壊される音、見知らぬ女性の叫び声、なんて物騒な物を見ている俺たち。
怖そうな雰囲気を醸し出しているが、大したことはない、ホラー映画。
ーAはびびりまくりだけど…。
ずっと珍しく俺の腕にしがみついているA。
全然悪い気はしないけれど、Aの顔が見れないのは残念すぎる。
「あのーAさん？生きてる？」
右側をみると、もうギブアップとでも言うように瞳に涙を溜めて震えながら俺を見上げるA。
そしてさらにきゅっと俺の腕に力を入れると、ふる、と首をふった。
ーうわ、なんだこれ据え膳？
俺は色々と抑えながら声をかけた。
「Aさん、もう寝る時間ですが移動できますか？」
俺はおどけた口調でそう伝える。
時刻は11時。
俺はあんまり眠くないけど、決まってAはこの時間になると、とろん、とさせた目を擦り出すのだ。
ところが、Aはそれどころではないらしく、一向に動こうとはしない。
ーあんまり怖くないと思ったけど、こりゃ悪いことをしちゃったな…。
俺は申し訳ない気分になった。
でも早く寝てしまった方が、Aが楽になる気がする。
そこで俺は名案を思いついた。
Aの腕をするりとはがし、俺をぱっとみたAをそのまま持ち上げる。
驚くAはいつもより高い視点も怖いのか、俺の首に腕をすばやく回した。
「お姫サマ抱っこで運んであげよう！」
俺がにこっと笑うと、つられてちょっと笑ったA。
2時間ぶりのほほえみに、胸がきゅんとしつつ、足を運ばせる。
ーそれにしてもちっちゃいしかるいし、不安になるな。
「Aーちゃんと食べなきゃダメだかんな？」
Aの華奢な体からはAのいい香りがただよっていて、こちらも正直、気が気でない。
寝室について、俺はベットにAをゆっくり下ろした。
しかし、首に回し腕を離そうとしないA。
「…ん？Aさん？」
俺が動揺して声をかけると、俺をみるA。
俺がとりあえず隣に座ると、Aも、俺の方を向いて座りなおした。
するとAが顔を近づけて来て焦る。
「えっと、A…？」
耳にかかる吐息にぞわっとした。
ー一緒に、寝よ？
俺の中で何かが弾け飛んだ音がした。
そのまま勢いよくAをベッドに押し倒すと今度は俺が耳元でささやいた。
驚くAの耳にキスをしてにやりと笑った。
ーAが悪いんだかんな。お前、えろすぎ。
今日のおはようは？
「…おはよ、お前、猫みたいに寝るんだな」
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作者名：沢井 | 作成日時：2018年1月2日 15時
