Backstage8 ページ8
「――怖い?」
「そういうんじゃなくて――」
うまく言葉が出てこない。
「Aをだますつもりは微塵もなかった」
「わかってる」
だまされたなんて思ってないよ。私が一人ぼっちで過ごしていた夜の公園で、昴さんに出会ったときは、それまで他人とほとんど会話をしたこともなくて、今思えば他人に対する警戒心がMAXだった。
それに、私なんかに簡単に打ち明けていいレベルの話なら、そもそも「偽装死」する必要なんてなかったはず。
どういったらいいんだろう――。
そんな悲しそうな声、聞きたくないよ。
彼はソファ越しにそっと私を抱き寄せる。壊れ物をそっと、扱うみたいに優しく抱き寄せる仕草は――もちろん、「沖矢昴」も「赤井秀一」も変わらない。
私は彼の手をぎゅっと掴む。
あなたが『類似点に注目すれば、別人ではないとわかるはず』って言ったから。
きちんと探した。
だからね、手も指先も、その体も優しいところも、頭の撫で方も同じなのは――もうちゃんとわかったよ?
声も口調もしゃべり方も、全然違うけど。それでも、大丈夫。
もう少し時間をかければ、ちゃんと、「同じ人」として認識できると――思う、たぶん、きっと。
私の想い、なんて言ったら伝わるんだろう。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時