恋人の愛はちょっと重たい1【名探偵コナン/愛され/逆ハー】

41グラム ページ46

21時を過ぎた頃、スマホが鳴った。

公衆電話から発信されている。

「もしもし？」

「出てくれて良かった。きちんと眠れていますか？」

電話の向こうの声は、沖矢昴だった。

「眠れないから今すぐ帰ってきて」

「それは困りましたね。今はどうしても無理なんです。少しだけ、出てきてもらえませんか？
　今は家に寄れなくて」

とはいえこんな時間心配だから、マンションの下ですぐにタクシーに乗って、と、昴さんが言う。

「うん」

「心配だから、スマホは切らないで。何かあったらすぐに駆け付ける」

「だったら迎えに来てくれればいいのに」

「それが出来たらいいんですけどね。今度、埋め合わせは絶対にしますので。
今夜だけは――」

どうか、お願いと優しい声で優しい口調で甘えるように頼まれては、断ることができない。
どうせ、一晩中眠れる気がしなかった。

家に帰って着替えも済ませていなかった私は、そのまま家を出る。

呼び出された先はファミレスだった。
私がついたのを見て、昴さんはファミレス近くの公衆電話で受話器を置いた。

「何やってるの？ こんなところに呼び出すくらいならうちに帰ってきてよ」

「いろいろあるんです。Aさん、心配かけてすみません。きちんと眠れてますか？」

冷えたら困るからファミレスに行こう、と、昴さんは言う。

「嫌だ……ここで話す」ぎゅうと縋りつけば、困ったように微笑んでいつものようにそっと頭を撫でてくれた。

「あなたが私に抱き着くなんて――よほどですね」

「よほどだよ。わかってるでしょ？」

「でもほら、風邪をひくと困るから、中で――。どうせ夕食も食べてないんでしょう？」

「そうだけど」

昴さんは30分くらい、なんてことない雑談をしながら私と一緒に食事をとる。そうして

「眠れなかったらこれを飲んで。副作用のない睡眠薬」と、私に小さな箱を渡してくれた。

「また倒れられたら困る。23時になったら必ず飲んで」と念を押す。

「でも」

「大丈夫。副作用がないことは毛利探偵で実証済みですよ」と、声を潜めて言う。

「何それ……？」と言えば、実は毎回コナン君が毛利探偵を睡眠薬で眠らせて、声を変えて推理している――なんてすごいことを言い出すから目を丸くする。

「ま、あれは針なんで飲み薬とは違うんですが、開発者は同じ阿笠博士なんで」とさらりと言う。

阿笠博士、やばくない――？

昴さんはいたずらっ子の顔で人差し指を唇の前に出し、「しい」と笑って見せた。

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