2グラム ページ3
電話の向こうが無音なのが怖い。
彼の電話には完璧なGPS対策が施してあるので、こっちから居場所を突き止めることなんてできない。
私は部屋のテレビをつけて事故情報を探しながら、ジョディに電話をかける。
「今日そっちに用があるって言って出て行ったんだけど、シュウ、そこに居る?」
「ううん、あっという間に帰って行ったわ。――そうね、5分くらい前よ。何かあった?」
ジョディの軽やかな口調から察するに、事故の情報は入っていないようだ。
まあ、沖矢昴が事故を起こしてもFBIに連絡が入ることなんてない。――もちろん、日本でFBIがあれこれしていること自体が問題なので、赤井秀一であっても同じだろうけれど――
「ううん、運転中に電話しても悪いかなと思っただけ。急ぎじゃないからいいの、忙しいのにごめんね。来週また仕事でそっちに行くのでよろしくお願いします」
私はなるべく平常心で電話を切ったけど――。
都内のあちこちで、車の事故が起きているというニュースに不安が募る。
「零!」相変わらずどれほど忙しくても、大抵私からの電話にはワンコールで出てくれる零は、今日も電話に出てくれた。
「どうした?何があった。君の話を聞くくらいの時間は取れるから、一回深呼吸してから続きを話して」
名前の呼びかけ方だけで人の心理状態がわかる零って、なかなかすごいよね。でもそんなことに感心している心の余裕が、今の私にはない。
「ねえ、なんで車の事故が多発してるの? 昴が巻き込まれたってことない?」
「A、落ち着いて。どうした?今一緒に居るんじゃないの?」
「違うの。事故だったらどうしよう――」
「大丈夫、あいつは殺されても死なないタイプの人間だ。おおよそどの辺にいるか見当はついている? 調べてあげるから待っていて。――いや、おとなしく待って居たりはしないよな。そうだな、君は今会社? じゃあ、そこからほど近い××ホテルの屋上まで15分で来れる? 屋上に上がれるよう支配人には僕から話をつけておく。スマホは持っておいて。もしかしたら、君の勘違いで彼は無事かもしれないから、ね?」
シュウへの偏見を取り混ぜつつも、聞き分けのない子どもにでも言い聞かせるように、テノールの声がことさら優しく響く。
私は総務のユカちゃんに、社内にあるIoT家電をネット回線から切り離すか、無理なら電源ごと切るように頼んで会社を後にした。
267人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時