元彼と再会3 ページ6
仕事が終わった後、誘われるがままに射撃場に行った。
地下駐車場がいっぱいで、近くの駐車場に車を止めて歩いていると
「蘇芳ちゃん!」と声をかけられた。
「あ、近江谷くん。こんな時間から仕事?」
「ちょっと外に出ていて今から戻るところで――」
「そっか、頑張ってね。一応、家では筋トレやってみたんだよ。また行くね!」
なんて立ち話をしていたら、あえて離れて歩いていた沖矢さんがわざわざ私のところに戻ってきた。
「え……と?」近江谷くんが、沖矢さんを見る。
あのさー、いかにも「私の恋人に気軽に話しかけてもらうのはやめてくれます?」みたいなオーラを出すのやめてくれるかしら。笑顔が怖いです、ほんっと。
「あ、えっと。――私の恋人」
他にうまい紹介のしようがなかった。当然のように肩に手を回してくる人を他になんて説明する?
もっとも、近江谷くんは私が恋人と長続きしないと思っているはずだから、多分深く気に留めないに違いない。
「こちらは、ジムのインストラクターよ? じゃあまたね、近江谷くん」
私は近江谷くんにひらりと手を振ると、私はやむなく沖矢さんの手を掴んだ。ぎゅっと思いのほか強く私の手を握られて、心臓が強く跳ねた。
.
前回は銃に対する不安感もあったけれど、2度目の今はそんなことよりも上達したい気持ちでいっぱいだった。
筋トレはまだ始めたばかりだから何も身についてないけれど、そうやって体を鍛えたらもっと上手く的が撃ち抜けるようになるだろうか。
「すごいな、2度目とは思えない。取り扱い方も完璧だし、姿勢も前よりずっと上手い」なんて言って、相変わらず沖矢さんは褒め上手だ。
「沖矢さんの教え方が上手いだけですよ?」と、シャワーを浴びた後濡れた髪をバスタオルで拭きながら言えば、ふわりと笑って腕の中に閉じ込められた。あまりにも突然で、逃げ損ねたけれど同時にキュンと胸が高鳴る。
「そんなことはない」というから、笑ってしまう。
「この前、自分で教え上手って言ったじゃないですか?」意外と口から出まかせだったんだろうか。
まあ、FBIでは聞いたことないけどね。シュウが教え上手だなんて。
「そうだったかな、記憶にないな」沖矢さんはそう言うと、私の手からバスタオルを取って髪を乾かし始める。
「君が笑ってくれるとほっとする」と、頭上で小さな呟きが聞こえてきた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時