敵の敵16 ページ50
コーヒーリキュールに牛乳を注いで、シュウが混ぜるのを見ながら、私は電話のコール音に耳を澄ましていた。
「もしもし」
時刻は夜の21時を過ぎたところ。シュウがご機嫌な時じゃないと、私のスマホは取り戻せない。
「零、今何している?」
今日工藤邸から手ぶらで帰って行った零は、何を思っているのだろう。
本当に騙されたのか。あるいは、騙されたふりをしているのか。
「Aからの電話を待っていた」
零に似つかない甘い言葉に、相好が崩れる。
私の目の前にカルーアミルクを置いたシュウは、少しだけ困った顔で、それでも口角をあげてその指で私の頬を突っついてキスをした。
あれほど嫉妬深いシュウも、何故か、零と私が仲良くすることだけには寛大だ。
「どうして? 週末だから?」
「まあ、そんなところだ」
「でも、零は明日も明後日もポアロで仕事でしょう?」
「君があってくれるならいつでもさぼる」
「梓さん、可哀そう」
あんなに安室さんの恋を応援してくれていたのに。
「あのね、日曜日、そっちのおうちに帰る。引っ越し準備もしたいし。
それでね、明日はともかく、来週の週末、あけておいてほしいの。どうしても」
「いいよ。たとえ、この国で大規模なテロが起きたとしても君のことを優先する」
公安勤務のくせに、根拠もなく物騒なフラグを立てるのはやめて。
「そのときはそっちを優先していいけど。日曜日は――何時に帰ったらいい? シュウ、送ってくれる?」
私はスマホをスピーカーモードにしてテーブルに置いて、カルアミルクを口にする。
甘さが疲れを溶かしていく。
「俺が送れないと知っていてわざとそういうことを言う。
スマホを没収していることへの意趣返しか? まあいい。どこかまでは送るよ。降谷君は何時にどこになら迎えに来れる?」
「では、午後1時半に彼女がポアロに来てくれれば。そこからは仕事を休んで一緒に過ごすのでご心配なく。
それより、何時にどこに送り届ければいいんだ?」
仲が良いのか悪いのか計り知れない零とシュウとの会話の応酬は、以前と何ら変わらなくて安心する。
「零、月曜日の朝までそこに居るから、安心して」
そう。零にシュウの居場所を知らせることはできないの。今はまだ。
電話の向こうで、零がため息をついている姿が、目に浮かぶ気がした。
+++
続きます
溺愛してた?10【名探偵コナン/愛され/逆ハー】
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時