トラップ6 ページ32
「それ、日本では可愛い子には旅をさせよ、だよ? シュウは私に1人旅なんてさせてくれないでしょ?」
私は英語なんてわからないふりでそう言った。
沖矢さんは目を丸くする。
「あれほどさんざん君を自由にさせてきた結果がこうなったの、わかってないのか?」
シュウの口調なので、彼のハイネックをめくってスイッチを切ってみた。さすがにあれほど見せつけられたら、スイッチの位置くらい覚えるよ。
「いたずら好きなKittyだな」私の指は、彼の指にからめとられる。
「だってシュウの声が好きなんだもん。ダメ?」
それに、沖矢昴は怖い――とは言えない。
言わなくたってきっと伝わっている。彼はにっこり笑うと私の髪をかき上げて首筋に手を添える、それだけで緊張して強張る私に、優しく触れるだけのキスをする。
「ダメじゃない。それに、今日はもう、あんなことしないから怯えなくていい」
「本当に? 一日中? 夜寝るまでずっと?」
心底疑っている私を見て、彼は口角をあげる。
「大丈夫、約束するからそんなに怯えないで――君にはちょっと刺激が強すぎたみたいだな」
ちょっと、どころではない。
ことあるごとに、私の知らない世界を紐解いていくのやめてほしい。
むっとする私の頭を彼は優しく撫でて、嘘でないと伝えるためか幾度か触れるだけのキスを落とした。
「君の頼みを聞いて距離を置いていた間に、群馬で大変な目に遭遇したと思うけど、その件について何も聞かずにいてあげているのが、俺としての最大限の譲歩なんだが――これ以上は無理だ」
耳元でそんなことを言うから、ドキッとする。
「群馬って……。もしかして哀ちゃんの身に何が起きたか知っているの?」
「――あの動画を彼らが毛利事務所に送って、その姿をバーボンが目にしてシェリーの生存が組織に知られた結果、ミステリートレインで面倒なことが起きた――という、一連の流れ自体を知らないんだな、君は」
ものすごく淡々ととんでもないこと言うのやめて。
「何それっ!?――え、シュウもしかして探偵事務所を盗撮してたりする?」
「いや。さすがにそこまでは。知りたい情報があってハッキングしていたらたまたま……ね」
何それ。探偵事務所のパソコン、そんなに簡単にハッキングされていいわけ?
――私、毛利探偵に営業してみようかな? ハッキング対策、完璧にできますよって。
いや、でもコナン君に本業を知られるのも面倒だからやめておくべきか。
悩ましいところだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時