Who are you?12 ページ6
「零、仕事に集中して大丈夫だよ。私、数カ月くらい放っておかれても零のこと忘れないし、ちゃんと待ってる。シュウも生きているってわかったから、平気。
居なくなったりしないから、そんなに心配しないで?」
零はとても困った顔をした後、それでもしがみつこうとした私を抱きしめてくれた。
「だいたいみんな、居なくならないとか、絶対に死なないとか言うんだよ――それでも、この手をすり抜けて行ってしまう」
「そうだよね――でも、何も言わない人も消えちゃうことあるし」
消えちゃうんだよね、ある日突然、人は死ぬ。
零のクローゼットには真新しいとは言えない喪服がある。
「それに、シュウみたいに、派手に死んだくせに実際は死んでない人もいるよ?」
「赤井は本当に――規格外だな」
「職場に戻る? 時間があるならここで一緒に寝よう? 明日のご飯は作らなくていいし、私はちゃんと栄養のことを考えて食事をとるようにする。これ以上零に不要な心配はかけない」
「心配になるくらい殊勝だな――何かあった?」
「ちょっと、低体温気味だってことを自覚した」
「疲れているんだよ、無理しすぎ。――わかった、おいで。一緒に眠ろう」
「零も寝てよ?」
命を削って仕事をするのはやめてほしい。
「朝までは無理だけど――ああ、冷蔵庫の中にサラダとヨーグルトあるし、パンもあるから食べて行って。コーヒー、自分で作れる?」
「平気、覚えた」
何度かは間違えたけど。
零は何か言いたげに私を見つめていたけれど、諦めたように息を吐き、靴を脱ぐとふわりと私を抱き上げた。
私はパンプスを乱暴に脱ぎ散らかす。
「いつの間にかこんなに甘え上手になって。困った子だな」
と、さほど困った風もなく零が笑う。
白い歯がこぼれて、ほっとした。
「零が甘やかすの上手だからだよ、きっと」
重ねた唇は、きちんと甘い。
「さあ、どうだか」
「っていうか、早く帰ってこれるならそう言ってくれたらいいのに。取引先の人よりは零を優先するよ?」
「だから迎えにいっただろう? ――っていうか、あの男はいったいなんなんだ」
「沖矢さん? さあ。 『安室さん』と仲良くなりたいんじゃない?何度かポアロに行きたいって言ってたし」
「それは君と話す口実だろう?」
「そんなことないと思うけど」
私にだって、『沖矢さん』が何を考えて零と接触しようとしているのかなんて、さっぱりわからなかった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時