Who are you?11 ページ5
「そんなに焦るとむしろ何かあったみたいに思われますよ?
私はそれでもかまいませんが」
と、穏やかに微笑まれるとどうしたらいいのかわからない。
私が立ち尽くしている間に、ドアが開く。
きちんとカジュアル路線の服に着替えているあたり、さすがだとしか言いようがない。
何これ
安室透(仮)VS 沖矢昴(仮)
みたいな感じになってるし、安室さんにしてはやたらと挑発的な眼差しを、沖矢さんは好戦的な態度で受けているし。
落ち着いて欲しいけどかける言葉も見つからない。話しかけるだけで名前を呼び間違えそうだし、色々と私にはハードルが高すぎて自分の立ち位置を見失いそうだ……
「Aさん、遅くまで男性と2人きりでいるなんて、心配するじゃないですか」
ポアロでの安室さんとは微妙に違う。
「ご心配には及びませんよ、安室さん。私にとって彼女は、取引先の大切な方ですから」
シュウはとても楽しそうだ。
会話の途中にあえて、咳を挟んでくるところとか、本当にリアルだし。
そんなに零と直接話したかったなら、やっぱりロンドンで電話を代わってあげるべきだった。
お互い、偽の姿で会話を交わしたところで、余計に関係をこじらせるだけだってわからないのか、わかった上でやっているのか――。
「透、迎えに来てくれてありがとう。
沖矢さん、お大事になさってくださいね」
私は最低限の言葉だけかけると、零の手を掴んで殺伐とした空気の漂う工藤邸を後にした。
.
「零……?」
帰宅するまでお互いに無言だった。
じゃあ、と、自分の部屋に入る零の家に勝手に押し入って玄関で彼のシャツを掴んだ。
「怒ってる?」
「君のことを怒る権利なんて僕にはないよ。心配しただけと言っただろう? 聞いてなかった?」
深呼吸した後、彼は私の方に向きなおし、とても自嘲的な笑みをその実年齢よりはずっと若く見える、整った顔に浮かべた。
「一方的に迎えに行ったのは過保護すぎたな。君の自由を制限したいわけじゃない」
「ううん……心配かけてごめん。なかなか帰れなかったから迎えに来てくれて助かった。ありがとう」
「それはよかった。僕がずっとAの傍に居られたらいいのにね……。なかなか叶いそうにない」
彼は、金色の髪を乱暴にかきあげる。
褐色の肌に、疲れが滲んでいるようにも見えて胸がギュッと痛くなる。
それでなくても仕事が多すぎる零にとって、私の存在は癒しだけでなく負担でもあるはずだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時