カラオケボックス2 ページ22
「昨夜はね、蘭ちゃんからロンドンでのお土産話を聞いていたの」
「そっかー、ロンドンの。懐かしいんじゃない？ それとも、ひょっとして最近ロンドンに行ったりした？」
探るような視線に、一瞬どきっとする。
「まさか、ロンドン遠いから、そう簡単に行ける距離じゃないわよね。事件解決してロンドンに招待されるなんて、さすがって感じ」
「そっか。実はさ、メアリーがロンドンでAを見た気がしたって言ってたんだよな」
「え？ 本当に？ 他人の空似じゃないかな。東洋人の顔って似ているし」
私はにっこり笑って見せたけど――。嫌な予感がする。
私はメアリー本人は見ていないけれど、【まるでメアリーを子供にしたような】女の子ならこの目で確かに見た。
でも、一瞬だったからシュウに伝えて確認する時間すら取れなかったんだよね――。
それに、実際問題、メアリーの夫は日本人だ。アジア人だからとそう顔を見間違えることはないだろう。
あれが見間違えなんかじゃないから、今、マスミがこんな話を始めたんだろうか。
ただ、ロンドンに行った話をすると、「沖矢さん」にも触れなければならないだろうし、その「薬」も絡んでくるからちょっと今は無理だ。
秘密にするほかない。
「そこで、コナン君たちが何をしたか聞いた？」
「事件に遭遇して忙しくしていたみたいよ」
「ふぅん、ほら、丁度ウインブルドンの時期だったから、見たのかなって思って」
「もちろん！テニスの話してたよー！あれ、現地で見ると格別だよね」
私はそれが当たり障りのない話題だと信じて疑わなかった――。
でも、マスミの笑顔が何かひどく確信めいたものに見えて――、胸騒ぎを覚える。
「そういえば、工藤新一君には会ってないの？ ボク気になっているんだけど、学校にずっときていなくてさ」
「私も新一君には会ったことないなあ。蘭ちゃんの話によると――日本中飛び回っているみたいよ？ 平次君だってしょっちゅう東京に来てるから、お互い様なのかもしれないわね」
ロンドンで蘭ちゃんが新一君と出会った話は、口にすることができなかった。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月8日 10時
