留守番6 ページ20
平次君が東京まで来た目的は「死者から手紙が届いたからだ」と言い出した。
なるほど、さすが西の名探偵と言われるだけのことはある。意味が分からない上にかなり怖い。
「ごめん、そういう話は苦手だし私今日はここでさよならしてもいいかしら? またゆっくり、事件のない時に遊ぼう?」と、言えば
「ああ、Aさんは事件とかって柄やないもんな。ほんまは、ゆっくり話がしたかったんやけど」と平次君が白い歯を見せて爽やかに笑ってみせる。
「ううん、全然。ごめんね、事件が苦手で。また東京に来るときに声かけて?」といえば。
「せやせや、早うAさんと一緒にお酒が飲めるようになるとええんやけどな」と続けた。
「お酒かー。うん、待ってるね。私強いよー!」と答えれば、毛利探偵は未成年相手に何を言ってるんだ、という冷たい視線を投げてきたので話を止める。
そういえば、コナン君も冷たい視線を送っていた。気が早かったかしら、ごめんね。でも、3年なんてあっという間だよ。
「蘭ちゃんもごめんねー、昨夜も楽しかった。また時間があったらお話ししようね。おうそう、妃弁護士の都合の良い日、連絡してくれる? 七夕の日以外だったらいつでも大丈夫。
上から荷物だけ取ってきて帰るね。合い鍵はすぐにここに返しに来るね」
本当に変わった界隈だわ。私以外の人は皆事件は平気ってことだもんね。多分、私の方が一般的だと思うんだけど――しかし、ここにいると自分が少数派と感じてしまう。
「そっか……。A、帰るの? だったらボクも一緒に行こうかな。聞いて欲しい話があるんだ」
私が荷物を取って毛利邸から降りてきたタイミングで、マスミもそう言って毛利探偵事務所を後にした。
――後で話を聞いたところ、蘭ちゃんたちはその後出かけて行った先でも殺人事件に遭遇したというのだから――。いやいや、私は帰宅して正解だったと思いたい。
目の前でバームクーヘン食べた人が死んでしまったら、私は一生バームクーヘン食べられなくなりそうだけど、蘭ちゃんは確かそのとき、焼き菓子を食べながら「そういえばねー!」と話をしてくれたので、メンタルの強さはけた違いだった。
.
沖矢さんがいるかもしれないポアロに、マスミと一緒に寄る気にはなれないし、話もしづらい。
というか――もしかして私、今はマスミと一緒に居たら沖矢さんに声をかけられなくて済むのでは?
そんなことを思いながら、米花駅方面へと足を運んだ。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時