溺愛禁止！1【赤井秀一】【安室透】

ヘッドハンティング8 ページ36

いや、そんなことはどうでもよかった。

後20分もしないうちにFBIの人が来るし、私は風見さんとその打ち合わせをしないといけないの。赤井さんの相手をしている暇はない。

あまりの非現実的なレベルのビジュアルの良さに脳が混乱していた。落ち着かなければ。



「っていうか、赤井さん、ごめんね。私、今ちょっと取り込み中なんだ。もうすぐFBIの人が来るの。だから、後にしてくれる？」

「なぜだ。君が困っていると聞いたから国務長官の護衛を抜け出して駆けつけたのに」

サングラスを外しながら、ひどく不思議そうに首をかしげるの本当にどうかと思う。

「何言ってるの？ 今すぐ戻ってよ！」

国務長官の護衛って……。そういえば、今、来日しているって言ってたっけ。

でも、そんな人の話が日常会話で出てくると思わないじゃない？

場違いすぎて、背筋がぞっとする。



「いや、そちらはかまわん。元々俺の本職じゃないし、午前中だけの代理だったし。
　本格的な護衛でなくて、パーティの参加者としてのシークレットな立場だったからこんな服で……。
　着替える時間がなかったのは申し訳ない。

　あむ……君の隣人から君が困っていると連絡があって慌てて駆けつけたんだが……」

赤井さんは私の隣の風見さんを見て、言葉を濁す。

「一応聞くけど、その人はなんて言ってたの？」

まさか、また何も聞かずに飛び出してきたってことは……ないよね？

「俺の上司が君に無理難題を押し付けていると聞いた。合っているか？」

風見さんは気を利かせて、「少し外で待っています。話がすんだら扉をあけてください」と言って出て行ってくれた。

本当、申し訳ない。

っていうか、世の中には何も言わずとも話の通じる大人もいるんだなぁと感動さえした。

ちゃんと言葉を尽くしても意思の疎通ができない人もいるというのに。

素敵な人だ、風見さん……。

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