夏祭り3 ページ10
でも、そのことを園子ちゃんが気にした様子はまるでない。
「イケメンと言えば、結局また最近、ポアロに安室さん来なくなったよねー?」
と、あっという間に話の矛先は安室さんへと向いていた。
「そうなんだよね。空手部の後輩が、包帯巻いている安室さんを見かけたって言ってたけど、あれもどうなのかなー」
「怪我しちゃったの? それなら仕方ないかー」
なんて話題が変わり話が弾みつつあるので、私はそっとその場を離れた。
「端まで歩いてみる?」
商店街はそれほど長くない。あと半分歩けば、なんとなくお祭り気分を満喫できると思う。
昴さんの手を取ると、彼は身をかがめぱくりと綿菓子にかじりつく。見上げれば、いたずらが見つかった子供のような笑みを見せた。
「もしかして――本当は甘いもの、好き?」
いやでも、これも私のいたずらを封じ込めるための罠なのかも――。
「あー、家が燃えたお兄さんだ!」
ものすごく失礼な呼び止められ方をした気がする。
どうも、この通りを歩いている人はさっきからなかなか容赦ないな――。
視線を下げれば、特に悪気のなさそうな顔でにこにこと女の子がこちらを見ていた。
手には赤い金魚が入った袋をぶら下げている。
「歩美ちゃん!その言い方は――」
と、たしなめた、ブルーを基調にした浴衣をまとっているコナン君が、視線をこちらに向けた後、え? と、驚きを表情に滲ませた。
「――どうしたの? コナン君」
私は視線を下げて聞いてみる。
やっぱり、コナン君は昴さんの秘密を知っているんだよね?
そうでないのなら、この姿を見てそれほど驚くこともないと思う。
夏祭りに浴衣を着るなんて、普通過ぎて驚く要素なんて微塵もない。
沖矢昴がハイネックをことさら好む理由を知らないのであれば。
「い、いやー、その。
Aさんに会うの久しぶりだなと思っただけだよ。なんでもない。その綿菓子どこで売ってたの? って気になって」
「色付きの綿菓子がどんな味か気になる? あっちで売ってたよ?」
「うん、後で見に行ってみよっかな!ありがとう――」
色付きの綿菓子が特別な味だなんて、本気で思っているとは思えないけど。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年8月1日 15時