ボディガードは不要です7【沖矢昴】【安室透】 (ページ25)

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disclosure9 ページ25

私と秀一さんは最近、いつもそうするようにその日もダイニングで飲みながらおしゃべりしていた。

夏休みあけたら大学にどのくらいの頻度で行く？とか。
時間のある今のうちにやっておきたい研究って何？とか。

割と勝手に作家ルートが決まっちゃってるみたいだけど、やっぱりせっかくだから執筆メインの人生よりも、もう少し物理を活かしたことがしたいんだよね。とか。

工藤夫妻はともかく、新一君がここで暮らすって言いだしたらどこに引っ越す？とか。

そんな話をとりとめもなくつらつら話していたら、20時半頃Jが帰ってきた。

「J、お疲れ様。何か食べる？それとも、飲むだけ？」

秀一さんの友達ならお酒に強そう。

「Lady、ありがとう。こんなにかわいい子が出迎えてくれるなら仕事の疲れも吹き飛びそう。一緒にアメリカに戻ってくれる？って誘ったらシュウから怒られそうだからそれはとりあえずおいておくとして。

　ねえ、明日、俺の仕事手伝ってくれない？」

どこまでが冗談かわからなくて、私は秀一さんに視線を投げた。

「明日の仕事を手伝ってほしい、という点だけ吟味すればいい」

「いいけど、私にできることなら」

「ひらがなはそれなりに読めるんだけど、漢字がちょっと面倒で。まさかフロア案内に英語が併記してないエリアがあるとは思わなかった。
　偶然その辺で会った人のふりをして、各フロアの文字を読んでくれるだけでいいんだ。

　写真とって送信してオンラインで読んでもらうて言うてもあるんだけど、ハッキングされたら困るし」

時間と場所はここだから、と、手紙を渡してくれた。

「シュウ、ここで新しいパスポートが受け取れる。三日後」

Jは秀一さんに別のメモを渡す。

意外と疲れているのかもしれない。
思ったよりもずっと早く切り上げると、Jはシャワーを浴びて自室として割り当てられている部屋に入っていった。

「シュウも今夜はきちんと寝て。
　明日は一緒に朝ランに行こう？」

日本語でシュウと呼ぶのは私にはハードルが高すぎるので、流れで英語で話す。
グラスを片付け終わった秀一さんは微笑むとぎゅっと私を抱きしめる。

「もちろん、喜んで」

えっとね？今の会話で、私が秀一さんを誘ったのは朝のランニングだけのつもりだったんだけど……。

降ってきた甘く熱いキスのせいで、誤解を解くことはできなかった。