自信過剰な彼氏9 ページ39
「そんなの無責任な気がします」
「何に対してですか?」
のんびりした口調に巻き込まれそうになる自分を抑えなければ。私は口元を引き締める。
「じゃあ例えば、昴さんがゴーストとしての役割が終わった後は?」
「幸いにしてそんな日が来るのなら、とびきり上等なお酒を準備して、Aさんと一緒に祝杯をあげましょう」
そこまでの道筋が見えているかのように、はっきりした口調でそう言った。
「――あなたには、戻りたい世界があるんじゃないの?」
何かの目的を果たすために、わざわざゴーストになっているんだよね?
目的もないのに、死を偽装する人なんているはずがない。
「Aさんと一緒に戻れないのならば、戻らなくて構いません」
「――それは、もちろん秀一だって同じように思っているんだよね?」
本気で心配しているのに、昴さんは噴き出した。
「ええ、同一人物ですから。そこはもう、心配する必要はありません」
証明するみたいにハンドルから手を放して私の頭をくしゃりと撫でる。
「今日のところはもう、おやすみなさい」
なんか、全然納得できなかったけれど昴さんは少し空き始めた道路を楽しそうに運転していたので、それを見ていたはずがいつの間にかすっかり眠りに落ちていた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月13日 17時