美術館の下見7 ページ27
コナン君はかたくなに表情を崩さない。
「いいんだ、詳しい話はあとで確認すればいい」
「じゃあ、私が一緒にそっちに行ってあげる。心配しないで、逃げたりしないわ」
「死んだりしないでね、お願いだから」
彼はひどく真剣な顔で、そう言ってくるから私は目をみはる。
そういえば、秀一が今しがた「よく事件に巻き込まれるボウヤ」って言ってたっけ。
色々な死を見てきて過剰に不安がっているだけなのかもしれない。
「大丈夫よ、そんなに簡単に死んだりしないわ」
「嫌なんだ、もう。
自分の力不足で誰かが傷ついていくのを見るのは――」
その口調は、真剣そのもので私は言葉を失った。
「コナン君――?」
コナン君を探しに来た蘭さんが、私の手を掴んでいるコナン君を見て表情をこわばらせる。
「ありがとう、コナン君。
ごめんね、記憶も戻ってきてないのにふらっとこっちに来ちゃったから。
余計な心配かけたわね。
蘭さんもごめんなさいね」
私はわざと明るい声で二人に伝える。
「あ、いえ――。
記憶が戻らないなんて大変ですね」
「そうね。でも、たぶんいいこともあるんだと思う。
ほら、忘れていたいことってあるじゃない?」
私はみんなのいる方に向かって歩きながら、軽い口調でそう言った。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月13日 17時