0009 keigo ページ9
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「景瑚。」
公園のブランコでボーッと考えていると、いつの間にか横に座っていた純喜くんが俺を呼んだ。
「用事ないなら待っててくれたらええのに。」
「…俺だって、たまにはひとりで考えたい時くらいあんだよー。」
むしろ、今純喜くんには会いたくなかった。
行き場のない苛立ちを、"Aに想われている"というだけで何の罪もない純喜くんにぶつけてしまいそうだったから。
「景瑚さ、いつからAが好きなん？」
「…なに、突然。」
「だって全然気付かんかったから。」
いつからだろう。この日をきっかけに、とか、あの時のこれ、とか。そういうのは思いつかない。ただいつの間にかAだけが特別になって、知らないうちに"恋"をした。
「恋って、ええな。」
「急になんだよ、まるで恋してるみたいな」
そこまで言って、自分の鼓動が早くなるのを感じた。純喜くんは何か言いたげに、少しはにかみながら耳を触る。
「純喜くん、好きな人出来たの？」
「出来たって言うか、好きって気持ちに気付いた。」
「…A、じゃないよね？」
「そうやったら景瑚に合わす顔ないし。」
「俺、はるかのこと好きみたいやわ。」
動揺した。そしてすぐに、色々な考えが頭の中を巡る。
俺はAが好きで、Aは純喜くんが好きで、純喜くんははるかが好き？どうしてこんなことになるんだ。あまりにも複雑で、不毛で、悲しい結末しか待っていないじゃん。
それにもし、万が一、はるかが純喜くんを好きだったとしたら？Aは片想いが終わるどころか、どんな風に2人を応援しなきゃいけないんだ。
そんなのって、ないよ。
「お互い頑張ろうや。」
「Aも景瑚も、大事な幼馴染みやし。結ばれてくれたら俺も嬉しいわ。」
能天気な純喜くんの言葉に、俺の中で何かが切れる音がした。
「…けんなよ」
「ん？なんて？」
「ふざけんなよって、言ってんの。」
今、俺、どんな顔してる？
少なくとも、純喜くんが眉を顰める程度に怪訝な顔をしているのは間違いない。
だけどもう、止められない。
「純喜くんさ、まじで意味わかんないよ。」
「Aの気持ちに、本当に気付かない？それとも気付いてないフリして、好かれることの優越感にでも浸ってんの？」
「俺がどんな気持ちでAを好きかわかる？」
「Aがどんな気持ちでいるか、考えたことあんの？」
「何が大切な幼馴染みだよ。そんなの、とっくに終わってんのに。」
to be continued .....
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作者名：マツ子 | 作成日時：2022年10月1日 1時
