0027 junki ページ27
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日課であるランニング前に、自宅前で軽くストレッチをしていると、ジャージ姿のはるかが家から出てきて驚いた。
「はるか早ない?」
「うん、純喜そろそろランニングかなーって。一緒に行く!」
「走れる?俺めっちゃ早いで?」
「私に合わせて!」
ふん、と威張ったように笑うはるか。釣られて笑った俺は、はるかと一緒に、いつもより遅いペースで走る。
「ねーねー。」
「喋ると横っ腹痛くなんでー」
「ケジメつけたよ」
その言葉に、思わず立ち止まる。
はるかのケジメが何なのか分からないまま、数日が過ぎた。気になってはいたけど自分から聞くことは出来なくて、ようやく、答えが分かる。
「少し前に、Aと話したの。」
「Aと?」
「うん。景瑚が好きだったこと、伝えた。」
「あと、Aの今の気持ちも、ちゃんと知れたよ。」
"景瑚が好きだったこと、伝えた。"
その言葉に、俺の不安はどんどん大きくなる。やっぱり、俺じゃあかんかったのかも。はるかも、Aも、優しいから。お互い傷つけていたと感じてしまえば、はるかも俺との関係は終わりにするだろう。
「私、純喜のことが好き。ちゃんと、好き。」
うっすらと膜の張った、大きな瞳。涙が溢れないように瞬きを我慢するはるかは、微笑んだあと隠れるように俯いた。
「最初は、諦めるために純喜を選んだ。」
「…うん、」
「でも今は違う。純喜と居たいから、純喜と居る。」
「うん。」
「これからも純喜と居たい。ずっと一緒に居たい、です。」
勢いよく、深々と頭を下げたはるか。差し出された右手は少し震えていて、その途端に俺の不安も解けて思わず吹き出してしまう。
「俺、告られてるん?」
「告ってる!返事してください!」
「どうしよかな〜」
あまりの嬉しさに頬が緩んで、それが何だか悔しい俺は揶揄うようにはるかに言葉をかけてゆっくり走り出した。
慌てて追いかけてきたはるか。横を走りながら笑う彼女は、もう俺の気持ちなんてお見通しなんだろう。
「そんなこと言って"ええの〜?"」
「うわ、偽モンの関西人や!」
「純喜と居たらいつか関西人になりそ〜」
2人で大きな声で笑って、その幸せを噛み締める。そして、ずっと握れなかった小さな手をぎゅっと握った。
「ほな、関西人にしたろか。」
「それ、返事?全然嬉しくない!」
「はいはい、ペース上げんで!」
やっと、本当に手に入れた。
俺はこの手を、絶対に離さない。
to be continued ...
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作者名:マツ子 | 作成日時:2022年10月1日 1時