0013 friend ページ13
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景瑚は強い。そして、弱い。本当はAを手に入れたくて仕方ないはずなのに、Aのために身を引くことが出来る。"幼馴染み"としてそばにいる事を、選ぶことが出来る。
それでもまだ景瑚を手に入れたいと思ってしまう私は、やっぱり性格が悪いのかもしれない。
屋上でAが出て行ったあと、最初から気付いていたような景瑚が私の頭をポンっと叩く。
「盗み聞きは良くないな。」
「…ごめん、気になって。」
景瑚がAを呼び出したのを見て、内緒で着いてきてしまった。見えない陰に隠れていたつもりだったのに。
「Aの話、聞こえてた？」
「うん。」
「じゃあ、Aの好きな人も気付いたよね。」
「純喜、だよね。」
本当に、何も気付かなかった。長く一緒に居るのに、私は景瑚の視線の先を追うのに精一杯で。Aが純喜を好きだなんて、想像もしていなかった。
それから、もしAが私を大切に思ってくれているとしたら…純喜の好きな人が、私と言うことになる。
「拗れてんな、俺ら。」
そのとおりだと思う。見事に誰も幸せにならない結末を迎えると知った景瑚が、この選択をする理由もよく分かる。
だけどもし、本当の意味で景瑚がAを諦めることが出来たとしたら。私が景瑚と幼馴染みでなくなる可能性もあるわけで。そこに賭けてみたい気持ちが、やっぱり捨てられない。
「景瑚も、私の気持ちに気付いてるよね。」
私の言葉に、彼はわざとらしく笑って惚けている。それでも私の真剣な顔を見ると、すぐに笑顔を消して目を逸らした。
「はるかのことは、好きだよ。でもAを好きな気持ちとは違う。」
「それは分かってる。だけど、」
「口では諦めた、もう大丈夫って言ってもさ。ずっと好きだったし、やっぱりすぐに忘れることも無理だと思う。」
「すぐに忘れて欲しい訳じゃない。けど、私だって、ずっと景瑚のことが好きだったんだよ。簡単に諦められない。」
「じゃあ、俺がAを好きなまま、はるかと付き合ったらそれで満足するの？」
「そうしたら、私を好きになるかもしれないじゃん！」
景瑚の表情に、怒りが見える。いつもの戯れあった時のふざけた怒りではなく、景瑚の気持ちを踏み躙るような私に対しての、本当の怒り。
「だったら、はるかがそうしてよ。」
「好きじゃなくても、純喜くんと付き合ってよ。」
ねえ、どうして。
私の中の黒い部分が、彼の前だけで出てしまうのだろう。
to be continued...
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作者名：マツ子 | 作成日時：2022年10月1日 1時
