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誰かが仕組んでいるんじゃないかと疑ってしまうほど
ここを離れる準備は早かった

孔さんに頼んでいた恵の家に近い新居は次の日には構えられ、
すでに荷物は運ばれている



あとは高専を辞めるだけ、

任務のせいで五条君はいない学校を無駄に遠回りしながら
学長室に向かい、茶を啜っている学長に退学届を提出した
驚いて訳を聞かれたが、正直に話すと引き留められることはなく
夜蛾に挨拶しておけ、とだけ告げて引き出しに届けを仕舞った






元から夜蛾先生に会うつもりはない

私をこの世界に引き込み
生きていく術を教え
消えかけていた命を救い出してくれた恩人


いつも気にかけてくれる優しい先生に会えば、
ここに未練が残りそうだった


どうせすぐにでも先生の耳には入る
なるべく早くここを出て、埼玉に向かおうと
校門で待つ孔さんの車に向かった









「待て。」

『…』





「本当に馬鹿な娘だな。お前は。」

『…、ごめん。』






門を出るまであと一歩のところで
何度も怒鳴られた優しい声が聞こえ、足が止まる

最後の最後まで怒られるのかと諦めて振り返ると
また懲りずに変なぬいぐるみを持った夜蛾先生が腕を組んで立っていた







「事情は聴いた。納得は出来んが、理解は出来た。…悟の為なんだろう。」

『…。』




脳筋のくせに
聡くて、勘が良くて、回りくどい言い方をする






「良いのか。お前が消えたらアイツは傷付くぞ。これ以上ないほどに、」

『…良いよ。そのまま、私のことは嫌いになれば良い。』






「…。」

『私も彼も、これからの出会いの方が多い。お互いが、お互いしか愛せないわけじゃない。』





悲しむのはほんの少しの時間だけ
またいつか、自分を曲げても好きになるような人が現れる

私はその人と、
五条君もその人と、
また夢みたいに幸せな時間を、いつまでも一緒に過ごせばいい







「…そうだな、」

『……初恋だったんだよ。これでも。…先生に言ってもしょうがないけど、』





「悟もそう言っていた。俺にヘッドロックされながらな。」



あの写真の裏側にそんな会話があったなんて、
想像しただけで笑ってしまう




『……誰が言ったんだろうね。”初恋は実らない”なんて。呪い殺してやりたい。』







2人とも初恋だったなら、
こうなることも必然に思えてきて、もう傷付くのも馬鹿らしくなる



ごつごつとした手を頭に乗せ
元気でな、と優しく囁く先生に笑って応え
初めて特製人形を受け取り、門を出た

8→←6



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(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33、34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです!よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです!よろしくお願いします! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月24日 15時

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