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目的の金沢駅に到着し、立派な木造の門を潜ると
向かったのは観光地でもなく
緑豊かな自然に囲まれた霊園
お盆の季節も過ぎて
墓参りに来る人は誰もいない
墓石が並んだ小さな道をAさんの後ろを付いて行くと
突然立ち止まり振り返った
『もしかしたら嫌な気持ちになるかもしれないから、先に謝っとくね。』
「…?」
そう言って石畳の階段を上がって見えたのは
【 篠田家 】と書かれたお墓
何を話そうとしてくれているのか分からない
辛そうに墓石を見つめるAさんを
隣で見守ることしか出来ない
『…これ、私のお墓なの。』
「…え…、」
『…そこに名前あるでしょ。一番最後に。』
「…っ!」
横に掘られた名前の一番最後には
[ 香月A 享年十五 ] の文字
確かに同じ名前がある
でも確かにAさんは生きてここいにいる
訳が分からず、何も言えず、ただ綺麗に笑う横顔を見つめた
『夜蛾先生に頼んだの。高専に入学する代わりに、私を死んだことにして欲しいって。』
「…なんで、」
『こうでもしないと、もう家族を守れなかった。私の可笑しな天与呪縛のせいで、これ以上何かを失うのは耐えられなかったの。』
「…。」
『母は生まれてすぐに、父は3歳の時に亡くなった。2人とも原因不明の不慮な事故。気味悪がった親戚は疎遠になって、施設も転々として、10歳の時に本当に遠い親族だった子どものいない老夫婦が引き取ってくれた。でも12歳の時に、お爺さんが私が連れてきた呪霊のせいで死んだの。お婆さんは独りになって、それでも私を愛して、可愛がってくれた。』
「…。」
『絶対にあの人だけは守りたかった。でもどんどん強くなる匂いのせいで、呪いは残り香にも
持ってきた白い花を供えながら
御伽噺をするように淡々と言葉を紡いでいくAさん
夕日に照らされて表情はちゃんと見えないけど
指先が微かに震えている
『恵には、私と同じ思いはさせたくなかった。だから初恋の人を捨ててでも、あの子の傍に居ようと思ったの。』
「…っ」
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縞(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33、34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです!よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです!よろしくお願いします! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年4月24日 15時