チューベローズの初恋 続【呪術廻戦】

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辿り着いたのはさいたま市の住宅街

車内から男が指し示す方向を見つめると
公園のブランコで下を向いて泣いている男の子がいた
親の目のない所で1人で遊ぶにはまだ幼すぎる

小さな背中を丸めて肩を震わせる姿は
かつての自分と重なり目が離せなかった




まだ術式もまともに扱えない、
呪霊を呪霊として認識していない子どもの頃

自分にしか視えない
自分にしか寄ってこない異形の化け物たちが
恐ろしくて堪らなかった

誰にも手を伸ばせず、ただ逃げて視えてないふりをしては
家族からも隠れて1人で静かに泣いていた





『…。』


「伏黒恵。あいつの息子だ。”視える”し、”持ってる”だろうな。」






散々聞かされていた甚爾さんの1人息子の名前
あいつは才能に恵まれた、なんて他人事のように言っていた
憎たらしい顔が思い浮かぶ

死んだと聞き、悲しませる間もなく
まだ振り回そうとしている本当にクソみたいな男

依頼なんて聞かず突き放せばいいのに、
わざわざこんなところまで付いてきた自分にも嫌気がさす






あの子見てしまえば、
もう知らないふりをして逃げることなんて出来ないと知っているのに、







『…何歳、』

「4歳。依頼は恵の保護だ。やり方はお前次第。」





『義理の母親は？』

「この時間はいないんじゃねえか？帰ってこねえ日もあるな。連れ子と恵が家で留守番してる。」






再婚相手の子どもならその子は非術師だろう
恵を保護するだけなら東京に連れて帰ればいいが
それでは残された子どもが気にかかる
甚爾さんが死んだ今、その再婚相手もどこかへ消えかねない

どんどん消えていく選択肢に悲観し
小さくため息を吐きながら下を向く

顔を上げてもう一度恵を見ると数匹の蠅頭が周りを囲み
怯えるあの子を面白がっていた





「知ってるだろ。自分すら守る術がないのに、家族を守るために孤独を選ぶ子どもの気持ちが。」

『…。』






「俺もお前が適任だと思うよ。御三家とは縁遠い非術師家系の割に、禪院から恵を守れるくらいに力は強い。上との繋がりもないしな。」

『…。』






「それに、恋人が親を殺したせいで子どもが死ぬのは寝覚めが悪いもんな。」

『…黙って。』








両手を上げて、肩を浮かせて口をつぐむ男

いちいち癇に障る態度に苛立ちを覚えながら
ドアを開け、車から降りる




「引き受けたってことでいいかー？」




問いかけには無視してドアを閉め
その場にしゃがみ込み動けずにいる恵の所へ向かった

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