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予想が外れたのが癪だったのか、
不敬な私の態度が気に入らなかったのか、
眉間に皺を寄せて右手の盃を置くと
そのまま掴みかかって来る禪院家の当主
触れられる寸前に術式を使い、大きな体ごと弾き飛ばすと
目を見開いて驚いている
『このまま貴方を殺して、禪院家を潰しても良いけど。それじゃ後始末が面倒すぎる。』
「…。」
『だから、取引しない?』
「…確かに、特級にする価値がある女だな。」
反撃されるかと警戒していたが
ハッハッハッ、と高らかに笑い
その場で胡坐をかいて座り込むと髭を弄びだした
どうやら話は聞いてくれるらしい
「面白そうだ。言ってみろ。」
『恵の持つ術式は”十種影法術”。禪院家相伝の術式の一つだから、喉から手が出るほど欲しがってるだろうけど、渡すつもりはない。』
「それで?」
『こっちの要求はそれだけだよ。恵から手を引くこと。』
「…フン、相伝の術式を一つ手放すのだ。見返りもそれなりでないと困る。」
『私の出来る範囲なら、期待に応えるつもりだけど。』
その言葉を聞いた途端
渋っていた表情は一変し、残っていた酒を飲み干すと
嬉々として私を指さしてきた
「では香月A。お前が俺の元へ来い。」
『…はあ?』
「一生俺の手駒になるなら、甚爾の倅は諦めてやる。」
『それは無理。だったらこの家を潰した方がマシ。』
「…ならば10年。」
『5年。』
「………8年。」
『5年。』
「あ"あ"!?強情な女だな。もういい。5年だ。」
酔っているせいか意外に意志の弱かった要求に安堵し、
この勢いのまま縛りを提案すると素直に応じられ、正直驚いた
もっと泥沼の殺し合いになるのも覚悟していたが
到着して30分も経たずに一件落着しそうになっている
これでこの男の印象が変わるわけではないが、
御三家の当主とはもっと頭が固く会話ができない人だと思っていた
「…なんだ。」
縛りを終え、訝しげに顔を見上げていると
髭を伸ばしながら声をかけられる
『…もっとごねるかと…、』
「分家で禪院家相伝の術式を持つ子供と期限付きだが特級クラスの使える手駒。妥当だろう。」
『…そうですか?もっとこう…血筋が好きじゃないですか。貴方たちって。』
「分家の子供に拘るほどの価値はない。」
『…へぇ。』
「まあ少なくとも俺は手を引いてやろう。分家や他の本家の者がどうするかは知らんがな。」
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縞(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33、34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです!よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです!よろしくお願いします! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年4月24日 15時