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体の自由は奪われたまま
大きな布のようなものに包まれてどこかへ運ばれる



しばらく歩いて行くと

手足を縛った縄も、目と口に当てられた布もそのままで
小石と木の枝が散らばり、ごつごつとした地面に下ろされた





時間は分からないが
自分の体が放つ匂いが強まったことで夜であることは分かる


本気でここで死ぬのか、と
無惨で呆気ない自分の最期に失望する

30代後半くらいでそこそこ貯金して
海外にでも移住しようと思っていたのに、
まさか19歳で、しかもこんな所で死んでしまうのか


縄は外れないものかと
少し動けるようになった手足で足掻いてみるが
皮膚が擦れて痛みが増すばかりで緩まる気配すらない


呪力を封じられた
今の力では集まって来る蠅頭すらも祓えず
背中や足に縋りつく感触が気持ち悪い








『(…死んだら呪い殺す。)』


上層部の欲にまみれた大人たちの顔が浮かび
2、3人は呪い殺そうと心に決めて体の力を抜く






鬱陶しく纏わりついていた蠅頭と下級呪霊の気配が消え
代わりに獣のような息遣いの大きな何かが近寄って来る

目隠しのおかげでどんなに醜い容貌かは分からないが
完全に獲物を前にして我を忘れている




「ア"…ァア…美味シ、ソウ……アアア"ア"……!!」



『…ッあ"』




せめて弄ぶのだけはやめてくれと願っていたが
長い爪で腹を突き刺されそのまま高く持ち上げられる

さらに深く刺さっていく爪に滴る血を舐め
呪霊の興奮は高まっていく







「モット!食ベタイ!!…モット、……モット!!!!」






そのまま脇腹に噛み付き
長く味わうつもりなのかほんの少しだけ肉を抉り取られる
それでも溢れ出した血は止まらず
気を失いそうな痛みが走る


地面に垂れた血に寄って来る下級呪霊に腹を立てたのか
ダンッダンッと足を蹴り上げて蹴散らす振動が響き
目を覆っていた布が外れ呪霊の姿が見えた


昔話に出てくる鬼のように大きな体に
体の至る所にある目がギョロギョロと動いている

私の体なんてせいぜい2口で十分だろうに
血を啜ってはニッコリと満面の笑みを浮かべる顔に背筋が凍る




無駄に血を流されたせいで
今まで感じたことがないほど匂いが強くなっている
これでは待機している呪術師も戦闘どころではないかもしれない





薄れていく意識を名残惜しく思いながら
なぜか最後に浮かぶのは私を好きだと言ってくれた彼の顔

「惚れさせる」と意気込んでいたのに申し訳ない



















「返せよ、雑魚。」

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(プロフ) - 凄い面白いです!休校中の楽しみですねもう。更新応援してます! (2020年4月13日 10時) (レス) id: b1b211da94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月11日 13時

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