夢に彷徨う 【名探偵コナン】

312 悔恨 ページ24

「……」


「巴ちゃんが小学校入って少し経ったくらいかな、カジキの奥さんが心臓発作で亡くなった。


1年もよく持ったよ……でも、カジキがなァ……。


史軍壊滅までもう少しでカジキも死んでしまったから、巴ちゃんはもう独りぼっちさ…………」


「じゃあ、情報屋として生き始めたのは」


きっと、長官に恩返しがしたかったから。


そして、未だ見ぬ父親の後輩達を助ける為。


父親の信念を貫く為。


「……彼奴は自分が憎まれてもなお、諸伏を助けた、でもそれだけじゃない。


彼奴の同期、死にそうになった友人が他に3人居るんだけどな？


全員彼奴が命懸けで繋いだ命だよ。


彼奴はそれを知らない、もし知ってしまったら……」


降谷さんが、後悔するから。


勿論俺だって、後悔した。


何故だろう、何故そんな残酷なことがあるのだろうか。


知らない方がいいこともあるものである、俺は急に長官の顔が見れなくなって、深夜、人が見えない警察庁の中、俯いた。


「……勿論何時かは教えるよ、でも今は未だその時じゃあない」


「その時って？」


「人伝に聞いた話だが、彼奴も母ちゃんの心臓発作が遺伝しててな、残りが少ないらしいんだ」


「じゃあ、巴さんはそのまま……」


「いや、もしかしたら、死ぬ前に教えるかもしれん。


でも、生きてるのは事実だ、問題は彼奴が、後どのくらい生きられるか、だな」


「そんなに不味いのですか？」


「……俺が見た所、5年、いや2年と持たないだろうな……」


ああいう有能で、いい顔してて……。


言わば神様に愛されてる人間が、早死するからな。


長官の悲しそうなその言葉が、厭に頭に響いた。

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