【文スト】転生以下略したら太宰治の姉でした。

悩みが九つ ページ11

A視点




そして時と場所は変わり、擂鉢街。

私は片手に森さんの診療所から持ち出した医学書、片手に弟を引っ付けながら歩く。




いやしかし、医学書めっちゃ面白くない。面白いんじゃなくて面白くない。

それでも私は頭が良いのでさらっと読んだだけでも知識は蓄積される。面白くはないが無駄ではない。

もの凄いご都合主義だが、まぁ転生者なんてそんなものだろう。これが特典ならば利用しない手はない。




そう考えながら、視線を医学書から片腕にしがみ付いている弟へ変える。




「ふぅん、塗装用のメッキ液を飲んでのジサツが外国では大変人気、か……成程なぁ」



『弟が随分と物騒な事を考える様になったなぁ……いや悲しいことに何時も通りなんだけど。』



「なになに？ただしただし人気の理由は単に工業塗装業者にとって手に入りやすい薬品であるからで、決して安楽なジサツ法ではない。

飲んだ物は生きながら内臓を溶かされる激痛に何時間も悶えながら死ぬであろう……

うぇっ、試さなくてよかった……姉さん、心中の時にはこれだけはやめようね。」



『姉さんってば弟と、というか誰とも心中する気はないんだな。残念ながら。』



「ええ、残念だなぁ……また気が変わったらいつでも言ってね！

で、今の話知ってた？ジサツする時には気を付けてね！えぇと……」



「広津です。その……参考にさせて頂きます」



『弟がすみません……』




原作小説の会話にヲタクとしてテンションを上げつつ姉として胃を痛め、そしてそれらを決して表に出さない器用な人間が私である。

ていうかこれ、腕に抱きつかれてたら太宰さん(今は私も太宰だけどここでは弟の事を指す)が中原さんに蹴り飛ばされる時に私も蹴られない？大丈夫？

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