11.悪あがき。 ページ11
もちろん、学生の頃も大人になってからもそれなりに恋愛はした。
彼氏もいたし、友達と三角関係になって...みたいな修羅場だって経験した。
だけど私の芯にはいつも智くんが居て、彼が居るからどんなキツい失恋をしても平気だったような気がする。
たくさん泣いても、結局は「私には智くんが居るし！」とか思ってたんだ。
どこかで、人生の最後に一緒に居る相手は智くんだろう...と。そう思って生きてきていた。
だから、彼女を紹介された時は頭を殴られたみたいな衝撃だった。
智くんとそんなに身長の変わらない、よく笑うサッパリした女性。
こういう女の人が好きだったんだ...と思ったと同時に、これまでの失恋では感じた事の無い痛みに襲われた。
今までだって智くんも彼女くらい居ただろう。
だけど紹介されたのなんて初めてで、それってそれなりの覚悟があるからなんだろうなというのも感じた。
「私、智くんをこんなにも好きだったんだ...」と実感して、立ち直れない日々を過ごした。
そんな中で私は社長になり、最後の悪あがきのように智くんを運転手に指名した。
「Aちゃんは？」
「えっ？」
写真を眺めながらボーッとしてた私に、彼が問う。
「Aちゃんは、彼氏いないの？」
「居たら男の子を家に上げたりしないよ」
「アハッ、そうだよね」
「...雅紀は？」
質問を返すと、雅紀は少しだけ照れたようにタハと笑って「今ちょっとドキッとしちゃった」なんて頭を掻いてる。
自分はソッコーでちゃん呼びして来たくせに。
「雅紀は彼女いないの？」
「居たら彼女んちに転がり込むよ」
「フフッ、それもそうか」
雅紀はカフェオレを飲み干して「ごちそうさま」とマグをキッチンに運び、自分で洗った。
「ねぇ」
「ん？なぁに？」
「私、雅紀が日雇いバイトで食い繋いでたって言ってたから勝手に無職なんだと思ってたんだけど...」
「うん。無職だよ、今は」
「今はって事は、定職に就いてた事もあるの？」
マグを水切りに置き、雅紀はこちらに戻って来てやっぱり床に座る。
そして体をこっちに向けて、ソファに座ってる私を見上げた。
「僕も大人だから、仕事はしてたよ」
少し真面目な顔。
「でも家と同時に仕事も無くしちゃったの」
「え？」
「大家さんがアパートの隣で食堂やってて、僕そこのコックさんだったんだよね」
「あ...だから料理得意なんだ...」
「一応プロだったからねー」
雅紀が、ふーって息を吐き出しながら喋る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
米(ヨネ)(プロフ) - ずっと読みたかった『アディクトインダストリー』やっと読める日が来た事に感動(T^T)同じ人のお話を並行して読むには頭が追いつかないようで(笑)他の相葉さん読んでる最中に登場したレイさんの相葉さん。ずっと保温させていただいてました。満を持して！お邪魔します^^ (2019年3月29日 4時) (
レス) id: c17294886d (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 明けましておめでとうございます。櫻井社長が何か仕掛けてくるのか、こないのか。気になる。３月まで忙しくてリアタイで読めないの(泣)だから変なタイミングでコメントする事をお許し下さい(笑) (2019年1月2日 9時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - みっちゃんさん» 楽しんで頂けててよかったですー(*´ω｀*)cube、私も好きな映画だったのでお話に出したいなぁと思って(*´ω｀*)新章も楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - なおさん» 何か、例えばニノちゃんのお話だと物凄く反応を頂けるんですけど今回はあまり楽しんで頂けてる雰囲気を感じられなかったんですよー(^◇^;)でもお声掛けして頂けて良かったです！最後まで頑張ります(*´ω｀*) (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
rei(プロフ) - こっしーさん» こんにちは！私もこんなワンコが家にいてくれたら、本当になんでも頑張れるしすぐ家に帰りますー(*´ω｀*)続きも楽しんで頂けますように☆ (2018年12月30日 12時) (レス) id: 7992a9c5f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2018年12月5日 0時
