第三訓 ページ5
Aサイド
道場から…ううん、兄様から逃げ出したAは、あそこから少し離れたさびれた神社の裏でうずくまっていた
もう会うことなんてないと思ってた
Aはこんななりだけど一応武家の生まれだった。
けれど…生まれた頃から重度の人見知りで、自慢できるような特技なんて一つもなかったAは、当然のように親や親族から見離されることになった
それでも、兄様だけはAのそばにいてくれた。
周りの人から天才児と言われるような自慢の兄様だけは、Aを見捨てないでそばで愛してくれた
だけど…Aと兄様は血のつながりなんてない嘘の…偽りの兄妹だったって父様から知らされた時、Aの中は真っ暗になった。
Aはその日のうちに家から逃げ出して、松陽先生に拾われた。
そしてまた逃げ出したんだ…兄様の前から…
何処の馬の骨かも知れない汚らしい血が流れるAには、高貴な血が流れる兄様になんて会う資格すらなくて…
そんな考えが頭の中でグルグルと回って混乱して泣きそうになっていた時、後ろから枯れ木を踏んだような音が聞こえて振り返ると……
高「やっぱり…ここにいたんだな」
『……兄様…』
走ってきたのか若干息を乱した兄様が、後ろからAを見降ろしていた
Aはこんな情けない顔を見られたくなくて、すぐにまたうずくまった
『……どうして…ここがわかったの…ですか?』
高「……お前はいつも何かあるたびにここに来て、俺が迎えに来てたの覚えてないか?」
『……そう…でしたね』
高「それにしても、さっきから下手な敬語使うなよ。グダグダじゃねェか」
兄様にそう言われて、兄様と過ごしてきた輝かしい日々が脳裏に蘇って来て…流れる涙を抑えきれなくなってくる
『……だって……Aと兄様は…本当の兄妹じゃない…から…』
高「親父に聞いた」
『……Aも兄様も…嘘が嫌い…』
高「ぁあ、大っ嫌いだ」
『……Aと兄様は…嘘の兄妹だから…兄様と一緒に…なれ…なくて…』
流れる涙を必死に抑えて喋ってるから、うまく喋れなくて兄様に言葉が伝わってるかなんてわからない
けど、Aの想いは…願いは…たった一つ…
『見捨て…ないで……一人に…しないでぇ…』
目からいっぱいの涙を流し、すがりつくように兄様を見上げた時…Aの冷えた体が温もりに包まれた
その温もりの理由は、兄様がAを抱きしめているから…
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季奈乃 - この作品すごく面白いですね! 更新も頑張ってください! 応援してます!!!!! (2017年9月23日 13時) (レス) id: 937f71cb5a (このIDを非表示/違反報告)
香菜 - とても面白いです!これからも更新を頑張ってください!ほかの作品も作ってください! (2015年11月2日 17時) (レス) id: 39880b9d7b (このIDを非表示/違反報告)
信女(プロフ) - 面白いです!私も人に教えられるようなネタ持ってなくて…、初コメ失礼しました!更新頑張ってください! (2015年9月9日 6時) (レス) id: 58e33b6721 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十六夜☆ | 作者ホームページ:http://maru1215
作成日時:2015年8月24日 19時