第五場・二 ページ7
ノイマン わかりました。ですが、なぜ我が闘争を？
ツヴァイフェル 言わなくてもわかるだろう。我が闘争とはまさに、全人類を見通す真理、そして我が全ドイツ人にとっての聖書である。持っていないわけがない。なければ、問答無用で中に入ろう。
ノイマン 了解。すぐに持ってきましょう。
ノイマン、家に。ツヴァイフェルはノイマンが退場した際に時計を見る。
ノイマン邸の中 床には本と段ボールが積み上げられ。本棚がいくつも並ぶ。
ノイマン、夫妻に言う。
ノイマン 困った困った。ついに、ナチの猟犬がこの家まで来てしまった！
夫妻 ひょっとして中に？
ノイマン いや、我が闘争を持って来れば良いとのこと。だからお二人、是非お手伝いいただけないかと。確か、引越し祝いにもらったはず。見えやすいところにあるでしょう。
夫妻 わかりました。では私たちはあちらを(退場)
ノイマン さて、どこにしまったかな。この本棚の(本棚を強く押す、隠し部屋が出てくる)いや、ないな。
ノイマン、玄関へ。小さな靴箱の上に我が闘争。
ノイマン やや、玄関にあったなんて。無意識だったからか。自分の行動とは思えぬもの。どんな本でも大切にするつもりであったが。(叫ぶように)シュタールさん、ありました。玄関にですよ。ほんとう、遠くの方が近く、近くの方が遠いとはこのこと。いやいや、どうも、ありがとうございます。
ノイマン、一礼して外へ。
ノイマンは我が闘争を持ち、片手で傘を差して出る。
ノイマン どうぞ
ツヴァイフェル おお、たしかに。(時計を見て)しかし、早いな。本が散乱していると言ったが、なぜこんなにも早く？
ノイマン 我が闘争といえば、私の人生の教科書。それを粗末に扱うなど、不徳というもの。(声を潜めて)引っ越し祝いにもらっただけとは言えないな。
ツヴァイフェル ほう、なかなか殊勝な。よろしい、では我々は退散しよう(足早に去る、ドゥムも退場)。
ノイマン や、待て、私の傘！ ああ、行ってしまった。結構気に入っていたのにな。
ノイマン、うなだれて退場。第一幕閉幕。
続く
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断章(プロフ) - Sike!さん» ご高覧ありがとうございます。このサイトには戦争物が少なく、需要があるかどうか不安でしたが、そのような感想をいただけて、安心いたしました。重ねて御礼申し上げます。 (2020年3月27日 20時) (
レス) id: e3fb801185 (このIDを非表示/違反報告)
Sike!(プロフ) - コメント失礼します。戦争を題材にした小説は大好きなんです……まさかこのサイトで出会えるとは思ってもみませんでした。登場人物のキャラクターが際立っていて、セリフの苦手な私には羨ましい限りです。お話の続きを楽しみにしております。 (2020年3月27日 6時) (レス) id: b8651e6ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：断章 | 作成日時：2020年3月27日 0時
