儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

彼のために 10 ページ30

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訪れたパーティーはカジュアルスタイル。


私には初めましての知らない人だらけの中

私を連れて上機嫌な父と挨拶に回った。


父は本当に喜んでくれて、玲於の言うように

"パパ孝行" 出来たかな、なんて感じた。



ビュッフェ方式の食事を楽しみながらの

父友のデザイナーさんの新作披露の後は、

すぅっと灯りが落とされていく。



重低音が響き始めるとクラブのようになった。



父「この後はファッション業界の知り合いの
若い子達が来るらしいよ。Aの
知ってる人も居るかもしれないね。」


『…へぇ。…もういい？私。』


父「こら、興味持って！もう少し居なさい。
どうせ、帰りは一緒じゃないんでしょ？」


『…バレてた？』


父「相当ソワソワしてたよね。パパ複雑。」



親子で耳元で囁き合ってクスクス笑った。



父「帰る時には、一声掛けてよ。」


そう言い置くと、父はひらひら手を振って

自分の友人の集まりへ吸い込まれていった。



時間を確認すると、21時になるところ。


…玲於、もう帰ってるかな。いや、まだか…。


後、一時間、我慢しよ…。



会場の壁際の椅子に腰掛けて

音に身を任せる人達をぼんやり見ていると、

トン、と誰かに肩を叩かれた。



？「こんばんは、カオルさん。」


『…こんばんは、初めまして。』


初めて会う男性に身構えて愛想笑いをする。


？「ははっ。一応、二度目まして、ですよ。
…確かに、あの日はずっと俯いていて、
カオルさんは全くこちらを見なかったかな。」


『えっ？ごめんなさい、失礼しました…、』


私は慌てて立ち上がって頭を下げた。

でも、…近くで顔を見ても一向に思い出せない。


『すみません、お名前伺って宜しいですか？』


ケ「…僕、ケンゴ、って言います。
お会いしたのは、佐野君との件って言えば
ピンと来るかな？…あそこのデザイナーです。
カオルさん同様、彼のために頑張ってます。」


『…っあっ！！』


アレをポスターにしてくれたメーカーさんだ…


お詫びを兼ねた挨拶に行った時、

私、全く顔を上げられなかったから…。


『そ、その節は本当にお世話になりまして…、』


ケ「ふっ。そんなに謝らないで！
ウチも、今や売れっ子の佐野君に
モデルしてもらえてラッキーなんだから。」


『いや、はい、でも、はい…』



結局、今日も俯いちゃうよね…。


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