彼の世界 3 ページ3
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開演時間直前。
お客さんの入場して行く波が
一通り落ち着くのを見計らってから、
そろそろと関係者入口に進んだ。
はぐれないように係の人に付いて行く。
案内された先で、愛ちゃんが手招きしていた。
愛ちゃんは私の真後ろの座席。
ペコペコ頭を下げながら進んだ私の両隣は、
弟分グループの人が数名並んでいた。
何か…、目立ってない?この席…。
少し緊張していると、愛ちゃんに後ろから
背中をつつかれた。
愛『A、見にくいから眼鏡は取りな。
その代わりこのキャップ…被ってて。』
そして、私の頭に周りから目元を隠すように
ぎゅうぎゅうキャップを押し込んだ。
愛『…追加が始まる時から、預かってた。』
『え?』
少しずらして見上げると
ツアーグッズでもある黒いキャップ。
よく見るとそのつば裏に…
"オレだけ見てて"
小さく、あの見慣れた文字が書かれていた。
『(玲於…、ありがとう。)』
心の中で呟いて、その文字を指でなぞった。
_映像が切り替わる。
ドドドッと地響きするような歓声と共に
バンドの生音が聞こえてくると、
周りの男の子達が一斉に立ち上がった。
私もそれにつられて立ち上がる。
会場内の雰囲気は一瞬で変わった。
舞台の奥で、人影がせり上がってくる…。
私はじっと目を凝らした。全部、見る。
ここは、彼の夢の到達点の一つだから。
"Aちゃんは、…俺を見てればいい。"
幼い佐野くんの声がする。
『…見てるよ。ちゃんと見てる。
だから全部、見せてね…。』
愛『はーやとーっ!!』
愛ちゃんは周りの目も気にせず叫んでいる。
チラッと見ると、私にも"やれ!"みたいに
手をヒラヒラさせる。
私は、届けって祈りながら叫んだ。
『…さのくーんっ!!』
隣の男の子が、驚いてバッとこっちを
見たような気がしたけど、
そんな事気にならなかった。
私には確かに分かったよ。
立ち位置までたどり着いた視線が、
一番最初に、
私を見つけてた。
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しをちゃ(プロフ) - まぁさんおはようございます!また読ませていただけるのかな?と思ってます! (2021年10月25日 4時) (レス) @page49 id: dc85e84606 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - まぁさんお元気ですか??? (2018年12月5日 13時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - まぁさんこんにちわ!やっぱり何度読ませて頂いても泣ける。゚(゚´Д`゚)゚。本当に好きです! (2018年4月6日 16時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - この終わり方私も好きです、ナケチャイマスケド(><)名古屋ドーム私も行きますよ!楽しみましょう!続き楽しみにしてます (2018年4月4日 13時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - まなさん» こんにちは!"カオル"は主人公の芸名です。私としては、主人公は本名非公開で芸能活動してた設定でお話を進めています。なのでずっとカオル呼びの登場人物もいます。お返事がズレていたら、ごめんなさい。 (2018年4月3日 1時) (レス) id: 3f78a71996 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まぁ | 作成日時:2018年1月11日 22時