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きっかけ 8 ページ18

奈々『もうっ!マスク、
ちゃんと上げてよ!』


奈々さんが玲於に触れようと手を伸ばすと、

顔を上げてその手を掴んで押し戻す。


歩きながらマスクを上げてキャップも直して、

玲於は自然に私の隣に腰掛けた。



「…ねぇ、俺も聞きたい。」


そして、頬杖をついて私を見つめる。

綺麗な瞳。すごく透明な、瞳…。



「…お前、俺じゃなくていいの?」


玲於の透明な瞳が一つ瞬きした時、

彼の手は指輪に伸びて、その光を…引き抜いた。




奈々『あっ!取っちゃった!』



私の前で奈々さんが嬉々として笑う。


抜き取られた指輪はテーブルの上で光る。



私はショックで言葉を失った。

息が、詰まる…。



「…何にも、言わねぇの?」



私の顔を意地悪そうに覗き込んできた玲於が、

ハッとした目をして小さな声で呟いた。


「…ピアス…」



…耳を見せたくない。


私は咄嗟に玲於に背を向けて目を閉じた。

ぎゅっと左手を握って、奥歯を噛み締める。


泣いたらみじめだと思った。



大事なんかじゃないよ、

玲於には私はもう大事なんかじゃなかった。


…もう、代わりはいくらでも居るんだ。



『……帰る。』


早く、早く帰りたい。


もう眠ってしまいたい。



荷物を持って立ち上がろうとすると

固く握ったままの左手を、玲於が強く掴んだ。



嫌だ。もう何にも考えたくないのに。



『離してっ。』


掴まれた手を振りほどこうと必死で動かした。



「…暴れんなっ。黙って座ってろ。」


『いや、早く離して。お願いもう帰るから。
周りの人が見てる、やめてよ。』



小声で話していても、席を立ったり座ったり…

落ち着きなく動くわたしたちは、

端から見たら立派な痴話喧嘩に見えると思う。



本当は、それですらないのに。



帰ろうとする私を見る奈々さんは満足そう。


奈々『離してあげなよ、玲於。
…いいな、これ…。可愛い。』



そして私の指に一年光り続けた指輪に

手を伸ばそうとする。


"バン!"


すると急に玲於がテーブルを叩いた。

きっかけ 9→←きっかけ 7



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しをちゃ(プロフ) - まぁさんおはようございます!また読ませていただけるのかな?と思ってます! (2021年10月25日 4時) (レス) @page49 id: dc85e84606 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - まぁさんお元気ですか??? (2018年12月5日 13時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - まぁさんこんにちわ!やっぱり何度読ませて頂いても泣ける。゚(゚´Д`゚)゚。本当に好きです! (2018年4月6日 16時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
しをちゃ(プロフ) - この終わり方私も好きです、ナケチャイマスケド(><)名古屋ドーム私も行きますよ!楽しみましょう!続き楽しみにしてます (2018年4月4日 13時) (レス) id: 2f52667945 (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - まなさん» こんにちは!"カオル"は主人公の芸名です。私としては、主人公は本名非公開で芸能活動してた設定でお話を進めています。なのでずっとカオル呼びの登場人物もいます。お返事がズレていたら、ごめんなさい。 (2018年4月3日 1時) (レス) id: 3f78a71996 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まぁ | 作成日時:2018年1月11日 22時

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