ユメセカイ【江口拓也】

まつ ページ13

A


俺の


最初で最後の奥さん



「サイズ間違えたけどいつも付けてくれてたよね」


『太れってことでしょ？

知ってたよ』


「わかってたんだ」


『流石にわかるよ〜

まぁ、太れずに終わっちゃったけどね』


そう言って悲しそうな顔をするA


沈黙が流れる

俺は言いたい事が、伝えたいことがあったのに何かに塞き止められてるみたいに何も言えない

もどかしい



『うん！もう満足かな、思い残すことないし』


「まって！」


離れたくなくて、まだ話していたくて

声をかけた


『なぁに？』

「すぐに気づけなくてゴメン、今まで忘れててゴメン」

『気にしてないよ、忘れるべきだったんだよ』

「俺が1番最初に気づくべきだったのに

こんなにヒント貰わないとわかんなかった

俺、Aの旦那なのに」



そう言ってAを見つめる


『いいの、私、本当はこんな顔見られたくなかったから自分で見つけようとしたんだけど、ひとりじゃダメだったの』

「そっか」


続く沈黙

不思議と嫌な感じがしなくて

なんとなく落ち着く空気


懐かしい


「ねぇ、俺またAに会えるよね？」

『会えるよ、きちんとお仕事して、一生懸命自分の命ある限りしっかり生きてくれたら、私待ってるから』

「ほんと？」

『ほんと！』

「俺のこと、見て、見ててくれる？」

『もちろんだよ！

拓也くんには私の姿が見えないかもだけどしっかり見てるよ、見守ってる』

「じゃあ、もう少し頑張るから、見ててね、待っててね」

『うん』


「俺が他の女に目移りして浮気したら呪って」

『私のこと気にしないで恋してよw

今度こそ幸せな家庭気づいてほしいな…』


「Aと過ごしたあの時間が

俺にとって最高に幸せな時間だったから」


あれ以上の幸せはないと思う

そう付け加える


『ありがとう』


「次の休みにはお墓参り行くから、待ってて」


そう言うと何も言わずに



柔かく微笑んで

消えていったA





なんで忘れてたんだろ


本当にゴメン


ここの家建て直そう



Aと

また住もう



さっきまでAが生きていた頃のように見えていた室内は黒焦げ、瓦礫だらけに戻ってた

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