江口さんとお家時間【江口拓也】

9時間目 ページ10

カレーのいい香りで目が覚めた

食いしん坊みたいな目覚めだな

と我ながら思う


匂いをたどると明かりのついているキッチン


あれ？


そう思って時計を見た

06:32


時計が示した時間は日が傾いている時間

電波時計だから狂いはない


はず


お昼すぎからこんな時間まで寝てた


いよいよダメ人間になってきた


寝てただけでなく目覚めがカレーの匂いて…


ずっと気になってたカレーの香りを辿ってキッチンに向かうと


散らかったキッチン

鍋とにらめっこする彼



だいたい察した


『おはよ〜ごめんね、お腹空いた？』

「おはよ！あ〜これは違くて」


目を逸らした彼

何かやましいことでも？


『どうしたの？』

「スパイスからカレー作ってみたくて、やることなかったし、最近Aにばっかりご飯作らせちゃってるから大変かなって思って」


ちょっと照れながら説明する彼


可愛すぎない？


私を思って？こんなことしてくれたの？最高じゃん…


『え！？そうだったの〜？

気にしなくていいのに〜気持ちだけで十分嬉しいから！』

「いやいや！今日の夜はとりあえずコレね！もうちょいだから！そこの洗い物もしないで！」

私が溜まってる洗い物に手を伸ばそうとすると止められた

「これ、汚したの全部俺だから、置いておいて！」

『ご飯も作ってもらったのに洗い物まではいいよ！』

「いつもAがやってることじゃん！いいから！置いといて！！」

グイグイと背中を押されキッチンを追い出される

「ご飯できたら俺が持っていくからそれまでアニメかなんか見て時間つぶして！」

そう言ってキッチンに戻った彼


それから1時間後

ちょいちょい聞こえるガラス同士が強めに当たる音にヒヤヒヤしながら彼は料理を作り終えたらしい

「おまたせしました〜

俺作、ピリッうまっ！なスペシャルカレー」

唐突に始まったウエイトレスごっこ


トレーにのせて運ばれてきたものはなんとも美味しそうだった

テーブルに並べられる料理

メインのカレーに付け合せのサラダと卵スープ

栄養バランスまでしっかり考えられてる

「はいってことで、初のスパイスからカレー作りに挑戦しました！」

パチパチ〜と彼が口で言う

「俺は今日この一食分の献立を立てるのに精一杯だったのに1日三食分それを毎日考えてるAのありがたみと大切さと大好きさがわかりました！」

ありがとう！

そう言って笑う彼


『どういたしまして！』


「じゃあ早速」

『はい』


「『いただきまーす』」

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